Why Diversity #3 「21世紀型のマネジメントを考える〜無意識バイアス編〜」

2018.5.15

2018.5.15 ChangeWAVE

チェンジウェーブが不定期に開催しているイベント「Why Diversity」。

イベント開催のキッカケは、女性活躍を含めた多様性推進を「そもそもなぜやらなければいけないのか?」という問いでした。これに本質的に答えられているのか、さまざまな企業と議論を重ねる中で、きちんとした答えを出すべくイベントを開催することにしました。

当然私たちだけで結論が出ることではないので、毎回有識者にお越しいただいています。学術的な観点から見てどうなのか、多様性推進の本質的な意味や、実際にどのような経済的・社会的効果があるのかを伺いながら、議論してきました。

これまでのテーマと、今年のテーマ

第1回目は「そもそもなぜ経営にとって多様性推進が大事なのか?」をテーマに、早稲田大学大学院の入山准教授をお呼びしました。

第2回目は、「本当の個の可能性や、個に着目するという多様性」に関して、幸福学の第一人者であり、慶応大学大学院の教授でもある前野先生に登壇いただきました。

そして3回目となる今回は、いよいよマネジメントの在り方にフォーカスしてテーマを設定しました。今年のテーマは、21世紀型マネジメントの中でも、多様性マネジメントをしていく上で重要なテーマになるであろう「無意識バイアス(Unconscious Bias)」。

どのように無意識バイアスと向き合えばいいのか、最先端の研究について伺うべく、フェリス女学院大学の潮村先生にご講演いただきました。

続いて、パネルディスカッションとして、ダイバーシティに取り組む企業3社の人事の方々にもご登壇いただきました。

無意識バイアスについては、約2年前からチェンジウェーブでも議論を重ねてきました。特にマネジメント層の方々を対象としたe-learningツールを開発しましたので、最後にご紹介させていただきます。

第1部:講演「無意識バイアスとは何か、また無意識バイアスにどのように取り組むべきか」


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<潮村先生PROFILE>
1989年東北大学文学部(心理学専攻)卒業。1993年東北大学大学院文学研究科博士後期課程単位修得退学。東北大学文学部助手、信州大学人文学部助教授、アメリカYale大学心理学部客員フェロー等を経て、フェリス女学院大学文学部教授。

無意識バイアスとは何か。いろいろな説明ができますが、一般的には1975年のコリンズとロフタスという心理学者による「意味記憶ネットワーク」から始めるのが分かりやすいでしょう。

一般的に、「RED」という言葉を聞く・見る・思い浮かべると、多くの人が「火」「火事」「消防車」「(緑やオレンジなどの)他の色」「バラ」などを連想します。
私たちの心の中には、知識の連想構造が備わっており、比較的多くの人に共通しています。

私たちの意識は、「意味記憶ネットワーク」に基づき、さまざまな事象間(概念間)には連合が形成されています。この連合は無意識レベルで機能します。
この連合は、心理学の世界では「潜在的態度(Implicit Attitude)」とも呼ばれています。他にも幾つかの呼び方がありますが、無意識バイアス(Unconscious Bias)も同義で、1980年以降研究が盛んになって、現在では心理科学の中でひとつの研究領域を形成しています。

無意識バイアスの測り方

いくつかの方法がありますが、比較的最近開発された「IAT(Implicit Association Test)」というものがあります。使いやすさ・再現性の高さ・信頼性において圧倒的に多く採用されています。

IAT

上記がIAT課題の画面で、中央下部に単語が現れ、それに対してキーを押すというもの。

これがIAT課題のディスプレイ画面です。

例えば、「嬉しい」という単語が提示されたとき、良い印象の言葉なので、1つ目の「一致課題」では左のキーを押すのが正解です。
2つ目の「不一致課題」では「自己 or 悪い」は左のキーを、「他者 or 良い」は右のキーを押します。これに「嬉しい」という単語が表示されたら、正解は右のキーですが、ちょっと迷います。この2つの差、0コンマ数秒の迷いを測っている、これがIAT課題です。

自分のことを価値のある人間だと、無意識レベルで強く思っている人は、この課題がとても簡単で速くできます。でも、無意識レベルで自分に対して自信の無い人は、この課題は相対的には簡単ですが、無意識レベルで自信満々の人より、簡単にはできません。
この差を使って、個人差を測っていくことになります。

代表的な無意識バイアス

代表的な無意識バイアスは以下4つです。

  • ジェンダー
  • 人種
  • 年齢
  • セクシャリティ

この4つが代表的なものとされる理由は、

  1. 視認性が高い
  2. 基本的に、生涯を通じて自分で変えることができない(変えることが困難)
  3. 現実社会で引き起こされている問題が大きい

という理由から。

他にも、「肌の色」「国家」「体重」など、さまざまなものに無意識バイアスは存在します。

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無意識バイアスの低減

無意識バイアスは行動に影響してしまうため、無意識バイアスを低減することはできるか?という質問をよく受けます。結論からいうと、払拭はできませんが低減することは可能な面もあります。

低減するポイントは2つです。
自分の中の隠された心(=自分の中の無意識バイアス)の存在に正しく気づく」こと。
無意識バイアスは、自分の中の悪い習慣と類似して考えることが理解しやすいでしょう。
しかし、悪い習慣は目に見えますが、無意識バイアスは通常気づけません。だから、何らかの方法で正しく気づくことが必要です。

2つ目のポイントは「その無意識バイアスが自分の行動や思考に影響を及ぼすことを最小限にしようと、いつも意識(注意)を向け続ける」こと。
そうすれば無意識バイアスが存在していても、悪影響は大幅に小さくなります。

1つ目「正しく気づく」ためには、IAT課題などを実施し、自らの無意識バイアスについて正しい気づきを得ることが大切です。

2つ目「いつも意識を向け続ける」というのは、知識をインプットした上で、つい無意識バイアスが出てしまいそうな場面でも「そうしてはいけない」という高いレベルの信念や習慣を醸成することが必要です。


潮村先生は参加者の皆さんに「『無意識バイアスは、誰にでも当然ある』という認識を持ってもらうことから始めないと、どんなにはたらきかけても、またプログラムを提示しても難しいのでは」と語りかけました。

「無意識バイアスを認識し、『継続的に意識を向ける』ことが大切」というお話に、参加者の皆さんは熱心にメモを取っていらっしゃいました。

第2部 パネルディスカッション:企業事例に学ぶ ダイバーシティと管理職の意識改革

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第2部は以下3名の方にご登壇いただき、各企業の取り組みや今後の展開についてディスカッションを行いました。モデレーターは弊社 佐々木が務めます。

  • 三井物産株式会社 人事総務部 ダイバーシティ経営推進室 室長 白江喜実子 様
  • 株式会社ファミリーマート 管理本部 ダイバーシティ推進部 部長 中村幸恵 様
  • 中外製薬株式会社 人事部 ダイバーシティ推進室 室長 野原聖子 様

※以下、文中では発言のまま、各社様が自社を指す際に「弊社」と記します。

まずは各社様の現状と、どのような取り組みをされているのか伺いました。

中外製薬株式会社 野原様(以下、野原様):
弊社は2010年頃から女性をターゲットにした取り組みを始めました。背景には、新入社員で女性が増えてきたこと、彼女たちが結婚・出産などによりキャリアの継続が課題になってきたことがあります。2012年には専任組織として、女性に加えシニア、外国籍社員という3つの柱で取り組みを進めることになりました。
2016年頃からは、属性ではなく個々の社員の多様性に着目し、「ダイバーシティ& インクルージョン」という取り組みをしています。

株式会社ファミリーマート 中村様(以下、中村様):
弊社はダイバーシティについて遅れており、これまで人事部で兼務という形で取り組んでいたものの、本格的に専任組織が立ち上がったのは昨年からです。
トップを含め経営陣をメンバーにするダイバーシティ推進委員会を立ち上げ、経営戦略として、まず女性活躍推進から取り組むことで合意し、KPIを定めて昨年下期から邁進しているのが現状です。ゴールを決めて、ようやく入り口に立ったという感じでしょうか。

佐々木:
中村様個人の意見で構いませんが、どのテーマが一番のチャレンジになると思いますか?

中村様:
昨年は女性活躍推進1本に絞ってやってきたので、「ダイバーシティ=女性活躍か?」という声が、男女問わず非常に大きいです。
女性自身も「なぜ女性ばかり頑張らなければならないのか」という声がありますし、女性に絞った反動で無関心な男性を生んでしまいました。全員参加で、自分事として取り組んでいくことが課題だと考えています。

三井物産株式会社 白江様(以下、白江様):
弊社では、多様な人材が互いに認め合い、刺激を受け合うことで、イノベーションを創出し、企業競争力につなげるという「ダイバーシティ経営」を強く打ち出しています。このダイバーシティ経営推進のために3つの取り組みを行なっています。

1つ目が「働き方改革」。弊社の場合、「働き方改革=長時間労働をなくす」ということではなく、「生産性・効率性を高めながら、メリハリよく働く」ということを指します。人事としても、そういう環境を作るための制度を整えてきました。

2つ目の取り組みが「ワーク・ライフ・マネジメント」。
ライフで何かイベントが起こると、その分ワークが減るといったワークとライフを天秤の関係で捉えるのでは、なかなか上手くいきません。
そこで弊社では、自らのワークとライフのマネージャーとして、ライフでの責任をしっかり果たしつつ、ワークに向かっているときは全力を発揮して、双方を充実させてほしいというメッセージを出し、それを支援する様々な施策を整えています。

3つ目は、全ての人が各自の仕事に応じてしっかり期待を果たせるような環境づくりです。組織風土や意識の改革は一朝一夕にはできず、試行錯誤しているところです。
弊社は扱う事業・商材も多様で、各業界の商習慣や、国内外のビジネス現場における地域的な特性もふまえて、それぞれの仕事に合った最適なプロセスを、組織毎に構築してきました。それに対し、今のVUCAの時代に、「そのままで有効なのか?」「個人と組織の力を最大限引き出せているか?」という問いかけをし、変えるべきことや解決策を組織ごとに考えてもらい、少しずつPDCAが進んでいる段階です。
同じように役職者には、過去に自身が経験した育成の成功パターンを前提とせず、今の時代にあった多様な人材の活躍を引き出せるリーダーシップの在り方を考え、実行する必要性・必然性に気づいてもらえるよう、引き続いて取り組んでいるところです。


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その他、

  • 意識改革に携わる中で、印象に残ったこと
  • 顕著に出ている行動パターン
  • 年齢バイアスに対してチャレンジしていきたいこと

など、活発な議論が交わされました。

最後に、今後無意識バイアスに対してどのように取り組んでいきたいのかコメントをいただき、パネルディスカッションは締めくくられました。

野原様:
定期的に意識させるのが必要とのことなので、何か考えてもらう・気づいてもらうような、機会を設けていきたいと思います。

中村様:
昨年、経営陣と部長のところまでは理解が進んだので、今年は課長層にもその意識を持ってほしいと考えています。

白江様:
無意識バイアスは誰にでもあるということを、皆さんに受け止めてもらうような機会を作ること。
そして、そのバイアスを払拭することはできないという潮村先生のお話もあったので、1人ひとりが、お互いに「個」をディープに把握することで、無意識バイアスを超えるというチャレンジを、いろいろなところに広めていきたいなと思います。

管理職向けe-Learningツール「ANGLE」


ANGLE紹介

最後に副代表の藤原より、チェンジウェーブが開発した管理職向けe-Learningツール
ANGLE〜無意識バイアス編〜」についてご紹介させていただきました。

ダイバーシティ推進を進めていく中で、当初は女性活躍からスタートする企業が多かったものの、「女性だけでは何も進まない・変わらない」ということから、現在では着目先が管理職の意識改革に移ってきたと感じています。

しかし管理職の人数は多く、彼ら・彼女らにどうやってダイバーシティ推進の支援をしていただくか頭を悩ませている企業が多かったのも事実です。

男女差別はないと言いつつ、実際にふたを開けてみると、女性の管理職比率や登用の機会、何らかのプロジェクトにアサインする際になかなか女性が選ばれないということが、いまだに続いているという現状もあります。

この背景には、やはり「無意識バイアス」が影響しているのではないかと、チェンジウェーブでは2年ほど前から議論を重ねてきました。

先ほどの潮村先生のご講演や、パネルディスカッションでも挙がったとおり、無意識バイアスを認識するだけではなく、継続的な取り組みを行なう必要がありますが、管理職の皆さんは非常に多忙なため、なかなか難しいという実情があります。
私たちチェンジウェーブは、その環境を打破するようなことができないかと考え、今回の「ANGLE」開発に至りました。

ダイバーシティ推進を阻む無意識バイアスに気づき、上手くコントロールすることが、21世紀のマネジメントを担う方々に必要になってくるだろうとのことで、それを実践的に学んでいくツールとして開発しています。


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ツールの特徴

1)累計400社の変革実績に基づく設計で、自発的な行動変容を促す

2)IATにより「自分」の無意識バイアスのレベルを定量的に可視化(他受講者との無意識バイアスも比較)

3)3つのアプローチで信頼性・納得感を担保

  • ハーバード大学が開発したImplicit Association Test(IAT)
    日本での第1人者フェリス女学院大学潮村先生監修のオリジナル
  • 普段の起きがちな具体的シーンでの行動特性の客観チェック
  • 日本人に多い「性別」と「年齢」にフォーカスしたコンテンツ

4)企業のリアルな事例をベースに、常に「問われる」ことで理解と実践を繰り返す

  • 座学に留まらないフィールドワークで実践
  • 他受講者の学びからも気づきをえる設計

全10回のコンテンツ設計で、半年間で受講いただくプログラムになっています。潮村先生の講演にもあったように「定期的に継続して向き合い続ける」ことが大切なので、週1回受講していただく形にしました。

プログラムは「無意識バイアス」がどのようなものかをインプットするところからスタートします。その後、性別と年齢に関するIATで自分の無意識バイアスを認識。さらに、どのようにコントロールすればいいのかを学んでいきます。
実際にきちんと理解できたか、対処できるかを実践するフェーズでは、フィールドワークを実施し確認します。
座学で知識をインプットするだけでなく、日々のマネジメントの中で実際に活用しながら学んでいくスタイルです。

導入メリット

  • スピード:インターネット環境があれば全管理職に同時導入可能
  • コスト削減:管理職のスケジュール調整不要/通常研修より安価に導入可能
  • 受講者の負担軽減:1回約10〜15分で受講可能(IATテスト以外はスマホ対応)
  • 受講者データのご提供:無意識バイアスのレベルと受講者の変化度の確認が可能(個人特定不可)

※詳細・ご質問は以下よりお問い合わせください。


PRODUCT | ChangeWAVE|株式会社チェンジウェーブ

イベント終了後のアンケートでは「学術的な観点から学べて良かった」「無意識バイアスは誰にでもあるのだというのは盲点だった。自分は大丈夫だと思っていた」「今後は意識を向け続けたい」という声を多くいただきました。

無意識バイアスを上手にコントロールし、21世紀型の多様性マネジメントを進める企業、管理職の皆様を、チェンジウェーブは今後も後押しさせていただきます。

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