自分を深く掘り下げて見つけた「等身大の自分」

2017.9.5

2017.9.5 佐々木 裕子
代表取締役社長

チェンジウェーブでは、変革を「業界・企業・領域横断の社会変革デザイン」「経営変革・組織変革」「ダイバーシティ&インクルージョン推進」「次世代リーダー育成」「営業変革」の5セグメントに分類しています。

今回は「次世代リーダー育成」の事例として、三井物産株式会社 流通事業本部 商品流通部プロジェクト推進室マネージャーの高垣論子様にお話を伺いました。(※2017年6月当時)
これまでも同社でさまざまな研修を受けてこられ、現場でも第一線で活躍されている高垣様が、研修前と後でどのように変わられたのか、弊社代表の佐々木との対談形式でご紹介します。

■「自分は悩んでいない」と思い込んでいた

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――まず、研修前のご自身について教えてください。

三井物産株式会社 高垣論子様(以下、高垣):
商社に入ろうと思ったのは、日本を世界に発信するような仕事に就きたいと思ったからです。
大学時代に留学をしていましたが、当時一部で反日運動があって「ジャパン・パッシング」、バッシングを通り越してジャパンをパスしようと言われており、きちんと日本の良さを世界に伝えていきたいと感じました。
そのためには日系企業が良いと考え、中でも商社でしたらどの部署でも日本の良さを世界に伝えられると思い、憧れている大学の先輩が勤めている三井物産を選びました。

三井物産に入社当時から仕事一本で無我夢中に仕事をしてきました。仕事は大変なこともありますが、楽しく、お客様にも恵まれ、立ち上げに関わった事業も順調に育っていて、非常に充実していました。
一方で、この働き方をずっと続けるのは難しいかもしれない、と心のどこかで感じながら「自分はこのまま(この働き方)でいいんだ」と思い込もうとしていたと思います。
いま考えると、自分の仕事のクオリティに自信が持てない部分を、労働時間で一生懸命埋めようとしていたのかなと思います。コミットメントを見せることで、その達成の為にひたむきに頑張っていた時期でした。

チェンジウェーブ代表 佐々木裕子(以下、佐々木):
最初からずっとポジティブでしたよね。
研修前に参加者数名にインタビューさせていただくんですが、高垣さんはポジティブな方という印象を受けました。
「私、いまの仕事が大好きなんです!でもずっと無我夢中に仕事を続けることには不安を持っています」とおっしゃっていました。今は頻繁な出張や残業もできるけれど、働き方を変えたい気持ちもあり、でも方法がわからない、とおっしゃっていたのを覚えています。

高垣:
結婚・出産しても仕事と両立できるのか分からないから、独身の今はフルスイングでやるんだ!と考えていました。

母が私よりさらにポジティブな人なので、小さい頃から上手くいかないことがあってもポジティブに転換するトレーニングを受けてきている気がします。
仕事で上手くいかないことがあっても、「これは結果的に良かったんだ」と無意識のうちに思ってしまうところがありました。

一生懸命頑張っていたのはポジティブなパワーだけではなく、自分に対するコンプレックスや自信の無さを埋めようとしていたことに研修で初めて気づかされて、とてもショックを受けました。

■「固定概念を抉りだすワーク」で知った、今まで直視してこなかった自分

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――研修はどのような流れだったんですか。

高垣:
2日間の研修で、1日目は座学と石原直子さん(株式会社リクルートホールディングス リクルートワークス研究所 人事研究センター長 主任研究員)の講演がありました。研修には当社の社長が出席していたので、2チームに分かれて社長に伝えたいことをプレゼンするプログラムもありました。

佐々木:
自分が思う10年後の自分の絵を描くような、内面を掘り下げるワークもありましたよね。

高垣:
2日目に「固定概念を抉りだすワーク(※)」があって、とても衝撃を受けました。
自分の原動力が、夢に向かうパッションだけではなく、今まで目をそらしていた自分の弱さや、昔の思うようにいかなかった経験があることに気づいて、「あれ?ポジティブだけでもないぞ?」と。

※「固定概念を抉りだすワーク」とは、変化を起こす際、その変化から自分を守ろうとするメカニズムが存在すると言われており、そのメカニズムを把握するために用いられる。これにより、表面的な事象だけではなく、潜在的な原因を見つけ出すことができる。

佐々木:
思うようにいかなかった経験とは?

高垣:
入社前にちょっと天狗になっていたのだと思います。英語が得意で、理系なこともあり、自分はこういう社会人になるんだろうというイメージがありました。
でも、最初に自分がイメージしていなかった部署に配属されたんです。この研修で「社会人の第一歩目で、自分が思っていた自分のイメージと、周囲が自分に対して持つイメージが違うというギャップを目の当たりにした」ことを思い出しました。

最初の配属先で学んだことにその後何度も救われているので、いま思えばこの配属は本当に良かったと思えるのですが、当時は「自分が思っていたように評価されなかった」と感じていました。
「だったら、まずは目の前の仕事を全力でこなして、結果を出す!」とポジティブに考え、がむしゃらに頑張ってきましたが、「固定概念を抉りだすワーク」によって自分の中で消化しきれていなかった入社当時の気持ちに気づいたんです。

佐々木:
改善したいことには、「働き方を変えたい」って書いていましたよね。
それで私から「働き方を変えたら、何が起きるんですか?」と問いかけました。

高垣:
当時は地球の裏側の国との仕事だから、深夜の電話会議もありましたし、ある程度は残業しないと仕事が回らないと考えていました。大切なプロジェクトが駄目になるくらいなら、私が頑張ろうと思っていたんですが、佐々木さんに「本当にそれ、回らなくなるの?」と言われて、ハッとしたんです。

すごく印象的で覚えているのが、その問いかけの前後で「あ、これって自分に自信が無いから?」という考えが急に浮かんで、「もしかして、私は認められたくて頑張っているのかな?」と思ったんです。
パッションを持ってやりたい仕事をやって、プロジェクトの成長に向かって頑張る私、ではなく、「評価されたい、褒められたい」ために頑張っているんじゃないかと。それに気づいて、「あれ?これはポジティブだけではないぞ?」って(笑)。

もう、相当ショックでしたね。
衝撃を受けすぎて、研修後に同期と飲みながら昔話をしてたら、いろいろ点と点が線になってきて「思っていた自分と実態は違っていた」という弱い部分も含めて自己開示したら涙が出てきて、同期も「分かる」って一緒に泣いてくれました。同期にそんな話をするのも初めてで、とにかくあの研修は大きな体験でした。

佐々木:
すごく長文のメールをいただいたんですよね。
「居酒屋で女2人で号泣しました」って(笑)。

高垣:
あまりに衝撃的で自分の中で、当時は整理がついてなかったんですが、とにかくこの感動を佐々木さんに伝えておかなければ!と思ったんです。

■研修で「脊髄反射のポジティブ」に気づいた

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――研修後の変化について教えてください。

高垣:
一進一退ですね。自分のあまり好きではない部分に気づいてしまって、頭ではそれを受け入れて等身大の自分でいこうと思うんですが、まだまだできていない部分もあります。
ただ、自分はこういう人間で、良いところも悪いところもあって、この私で頑張っていくんだ、という気持ちはだんだん大きくなってきました。

佐々木:
何が一番変わりましたか?

高垣:
良い意味で楽になりました。
自分の弱いところを一生懸命埋めようと頑張っていた20代があって、弱さも受け入れて出来ることを精一杯やろうという気分になったのが30代だと思います。
その変化の中で、この研修にはすごく背中を押していただいた経験になりました。
いろいろな憑き物や澱(おり)が落ちていく過程の中の、重要な「禊(みそぎ)」の1つですね。

研修前までは「どうやったら評価されるか?」、「褒められたら嬉しい」という潜在意識が自分を操ってる部分があったと思います。もちろん、プロの社会人としては評価も気にする必要はありますが、今は以前よりフラットに仕事や案件に向き合えるようになったように思います。
まだ発展途上なので、アウトプットは改善の余地が沢山ありますが、「自分はどう受け取られるか?」と言うことを一旦横に置いて、プロジェクトを育てるために、チームとしてどうやっていくか?自分がとるべき行動は何か。ということに意識して集中できるようになりました。

――今後どのように変わっていきたいですか。

高垣:
自分の中で、チームを率いる人間としての距離感を掴みきっていない部分があるなと思っているので、プロフェッショナルな場面での人と人との距離感をもっと磨いていきたいと思っています。
近寄りすぎても駄目ですが、オープンにしなければならない部分を開けていない自覚があるので、これからたくさん経験を積んで、自分なりの「型」を見つけていきたいと思います。

佐々木:
自分を見つめるのは終わったから、今後はチームや部下、同僚など「人」を見て学んでいく時期なのかもしれませんね。

高垣:
本当に仕事というものに向き合ったとき、どうやっていくのかは、おそらくこれからですね。今までも失敗はたくさんしてきましたが、これからも失敗しながら少しずつ自分の中に経験を蓄積していくのかなと思っています。

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――佐々木さんから見て、研修前後で具体的にどんなところが一番変わったと思いますか?

佐々木:
最初からずっとポジティブで、研修の場でもちゃんと良い形になるようにファシリテーションしてくださっていて、リーダーシップも高いし、熱量もあると思っていたんですよ。だから、劇的な変化というより、「優等生」の力が抜けた感じがします。

高垣:
「脊髄反射のポジティブ」というか、深く考えずに優等生風なポジティブに転換してしまっていたことに気づいた感じです。

佐々木:
あと、一言ひとことが深くなったと思います。
例えば、これから研修を受ける後輩たちの前で話してもらう言葉とか。
もし以前の高垣さんだったら、「みんな頑張ろう!」「大丈夫、手を挙げたらきっとチャンスが生まれる!」というような、すごくポジティブなことを言っていたと思うんですね。
「今のみんな、ちょっと違うと思う!もっと元気出していこう!」みたいな(笑)。

高垣:
確かにおっしゃる通りです(笑)。

佐々木:
だけど、今は等身大であることの難しさや葛藤と、そうなったことによる自分の解放みたいなことを、押し付けるわけでもなく、深いところから話されているので、高垣さんみたいになりたいと思う人はたくさんいると思います。

高垣:
それは嬉しいですね。
あの研修で、後輩に向けてパネリストとして話す機会を何回かいただけたのも大きな経験でした。
後輩の前で、お腹を見せるというか、自分の弱さも含めた本音を赤裸々に語るのが初めてだったので、特に初回は「ここまで話して大丈夫かな」と、かなり緊張したのを覚えています。

今まで受けてきた研修は、どちらかというとスキルセットが中心でした。
マインドセットというか、内省する研修ってあまり無いですよね。根源的に「私はなぜこんなことになっているのか?」というような、深く掘り下げる機会をいただいて、本当に感謝しています。

佐々木:
そうおっしゃっていただいて私も嬉しいです。高垣さんの今後にますます期待しています。
本日はありがとうございました。

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