【研修レポート】踏み出す中東の女性たち 未来を自分で切り開くために

2017.12.6

2017.12.6 佐々木 裕子
代表取締役社長

JCCP国際石油・ガス協力機関(※1)が湾岸産油国の国営石油会社で働く女性を対象に開催した研修で、チェンジウェーブ代表・佐々木裕子が講師を務めました。

東京都内で行われた研修には、アラブ首長国連邦、オマーン、サウジアラビアの3カ国から9人、日本の石油関連企業からも7人が参加。
男性中心の社会というイメージがある中東で、管理職を目指す女性が何を課題に感じ、壁を乗り越えるためにどんなアクションを起こそうとしているのか、研修の様子をレポートします。

※1湾岸産油国との技術協力や人材育成、連携促進事業などを通して日本との相互理解構築を目指す一般財団法人

■日本と似ている!? 中東のジェンダーギャップ

世界経済フォーラムが発表した2017年のジェンダーギャップ指数では、144か国中、日本が114位となり、過去最低を更新したことが話題になりました。
一方、研修参加者の国を見ると、アラブ首長国連邦(以下、UAE)120位、サウジアラビア138位、オマーンはデータなし(2016年は133位)。UAEで政治参画の順位が高いほかは日本と同じくらいの順位にあることが分かります。

ジェンダーギャップ指数比較表

■変わる中東、若者の意識にも変化

従来女性の権利を制限してきた中東でも、女性の社会進出は進んできています。2016年、サウジアラビアで発表された経済改革目標「ビジョン2030」では、労働力に占める女性の割合を22%から30%に引き上げるとしており、今年(2017年)9月には女性の運転を認める国王令も出されました。
インターネットの普及で諸外国の情報に触れる機会も増え、若い層を中心にイスラム教の価値観に対する意識にも変化が見られるようです。参加者の中には「ひとり暮らしをしたのは家族で自分が初めてだ」という人もいました。

とはいえ、いまだ男性中心の社会であることに変わりはなく、女性管理職はごく少数。行動を起こそうとすると、壁を感じることも多いようです。

研修では参加者のリーダーシップとマネジメント能力の向上を目的としたプログラムを実施しましたが、参加者の積極性は目を見張るばかり。佐々木が”My lessons -4things you should know” をテーマに講演した後は質問が相次ぎ、次のプログラムに進めないほどでした。
また、自分自身の固定観念と向き合うワークショップでは、伝統的な価値観や多層にわたるヒエラルキー、社内政治など、様々な悩みが浮き彫りになりましたが、同時に自分たちがパイオニアとなり、アクションを起こしていきたいという強い気持ちも再確認できたそうです。異なる国、異なる企業で働く参加者に共感が生まれた様子も垣間見ることができました。

■一歩、踏み出すために(佐々木裕子)

CW佐々木

中東も日本も、女性の内なる悩みは変わらないのではないか。制度で解決できるような表面的なものだけではない。それが私の正直な感想でした。
参加者は根強い男性社会の中で、先頭を走っている方々です。技術者で女性は自分一人だけ、というような状況下で、女性らしくしなやかに頑張っていらっしゃる。

研修では「男性中心社会のCultureを打破しなければ」と多くの方が話されました。しかし、議論を進めるにつれて、「実はタガをはめているのは自分だったかもしれない」、と話し始められる方も多かった。Cultureの呪縛は社会だけでなく、自分にもある、ということかもしれません。

例えばリーダーになりたくない、などの躊躇や自信のなさといったもの。欧米で大学教育を受けた、いわゆる中東の「エリート層」の方でも、自信が持てない。自分のキャリアビジョンをなかなか描けない。自分自身の人脈・ネットワークも限られた範囲でしかない。
実際、自分の意識の深層を掘り下げていく、というワークショップが進むにつれ、多くの中東の女性たちから「自分の思い込みに気づいた」「本当にできないのか、やってみないとわからない」という声があがりました。だから、自分が何をやりたいか、ちゃんと見極めたいと。

今回私が一番驚いたのは、ビジネスの世界に身を置く若き中東女性たちの悩みの性質や表出の仕方が、日本の女性たちのものと酷似しているということでした。
もちろん、文化的な背景もあり、実質的な女性の権利制約は中東のほうが強く残っている訳ですが、ビジネスの世界で活躍するという文脈でいうと、日本も中東同様、「実質的には男性中心社会である」、という社会概念が、ひとりひとりの無意識に未だ色濃く影響しているのかもしれません。

中東でも日本でも、男性でも女性でも、自分のやりたいことを自分でつかみとり、周りを巻き込んでいくことに一歩踏み出すためのお手伝いが少しでもできれば、と思い、講演では私自身の変革(Change)についてお話しました。

講演というより、むしろ自分のこれまでの失敗談を交えながら、「My life lessons – Four things you should know知っておくべき4つのこと」と題し、私自身の等身大の経験談を共有させて頂く機会を頂きました。私にとっても自分の半生を振り返る、とても貴重な時間となりました。

Four things you should know(知っておくべき4つのこと)

  1. Know rule of the game(ゲームのルールを知る)
  2. Know you don’t know(己の無知を知る)
  3. Know what you are passionate about(己の情熱を知る)
  4. Know what you fear(己の恐れを知る)

例えば、最初の「ゲームのルールを知る(Know rule of the game)」。
世の中がどういうメカニズムで動いているか。組織がどういうルールで意思決定しているか。今の潮流、潮目はどちらに向かっているか。それを強かに理解したほうが良い、という話です。私はかつてこのゲームのルールを十分理解できていないまま、自分の想いと視野だけで安易に突き動いて自爆し、しかもそれを他責的に捉えてしまったという痛い経験があります。

自分のやりたいことに周りに協力してもらい、何かを変えていこうと思ったとき、最初にゲームのルールを理解しないと、ルールにうまく乗せて動かすこともできないし、ルールそのものを再構築する方向で動くこともできない。どちらもできないとなると、自爆する確率が高くなる(笑)。

冷静に潮目やメカニズムを見極める強かさの重要性は、昔のゲームのルールもまだ強く残り、新しいゲームのルールに変わりつつある日本や中東だからこそ、益々必要になっているように感じました。

最後に、4つ目の「自分が怖いと思っているもの」を知る、というテーマで、参加者の方々に自分の行動を妨げるもの、怖さ、固定観念が何かを見極めるワークをしていただきました。

終了後、多くの方から「私のことを言われているのかと思った」「私にとって大事なLessonだった、踏み出そうと思った」とおっしゃっていただき、とても光栄に感じました。
気づけて良かった、と握手を求めてくださる方もいました。
お話しした内容は、自分の実体験でしかないのですが、私にとっても大事なことでしたので、国籍や環境が違っても、変化のきっかけとなる本質は同じなのかもしれない、と変革屋として強く共感するひと時となりました。

人の本気の想いは、変化の波を起こします。
今回ご参加くださった皆さんがどんな一歩を踏み出されるのか、とても楽しみですし、私たちチェンジウェーブが少しでもそのお手伝いをできたのなら、大変光栄なことだと思っています。

ChangeWAVE

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