対話によって、
ダイナミックな変革をもたらす「コアな課題」を突く

2017.10.31

2017.10.31 佐々木 裕子
代表取締役社長

経営改革に携わる、と一口に言っても、その手法や内容は様々。
チェンジウェーブでは大きく分けて2つの手法を提供しています。
1つは経営層と直接やり取りする方法。
もう1つは、ミドル層などからボトムアップで仕掛けていく方法です。

今回は、経営層と直接やり取りする変革の事例として、株式会社スパイスボックス(以下、スパイスボックス) 取締役副社長 兼 執行役員 物延秀様にお話を伺いました。

スパイスボックスは2003年に日本初のデジタルエージェンシーとして創業し、現在の社員数は100名以上。デジタル・コミュニケーション・カンパニーとして、さまざまな企業のブランディング支援を手がけていらっしゃいます。

チェンジウェーブにご相談いただいたのは2015年。創業メンバーが経営を担い、経営活性化の打ち手を検討されていた時期と伺っています。
佐々木とのディスカッションを交えた経営会議では、創業当時は優位性のあった「デジタル総合対応」が一般的になった今、時代に合わせてゼロから事業を創造し直す必要があること、それを成し遂げられるビジョナリーな新リーダーを立てることが主題となっていました。


■「客観視」することの意味と、直近1年の変化

チェンジウェーブ代表 佐々木裕子(以下、佐々木):
物延さんに最初にお会いしたのは、経営会議の場でしたよね。

スパイスボックス 物延様(以下、物延):
当時の社長・副社長・執行役員クラスが集まるボードミーティングという会議でした。佐々木さんはその場でリーダーシップの重要性を提言してくださいました。何度かの議論を経て、事業変革を私自身が引っ張る体制にシフトしていきました。

―チェンジウェーブがお手伝いさせていただいたことで、どのような変化がありましたか。

物延:
やはり「客観視」できるようになったのが大きいですね。
日本の広告業界はある種、特殊なビジネスですし、”井の中の蛙”になりがちな面があったと思います。佐々木さんには本当にフラットに、客観的な意見をズバズバと言っていただいたので、自分たちを客観視するための写し鏡のような役割を果たしていただいたと感じています。僕自身も個として客観視できるきっかけになりました。

佐々木:
いろいろご質問をさせて頂いたのは、本当にちゃんと皆さまの今を理解させて頂きたいと思ったからなんです。そもそも、広告業界に土地勘があったわけではありませんし、社歴が若くスピード感をもって急成長していらっしゃる企業の変革は初めてだったので。
経営陣の皆様が何を見て、どんな事業戦略を考え、何に悩んでおられるのかを純粋に理解したかったんです。

物延:
スパイスボックスはデジタル広告業界の黎明期に創業しましたが、博報堂グループということもあり、どちらかというと旧来のマスメディアを中心とした広告ビジネスに近いところで広告主に向き合ってきました。その中で新規事業を生み出したいとは思いつつも、打ち手や視点がビビッドではありませんでした。いよいよ腰を据えて手を打っていこうというタイミングでチェンジウェーブさんにご協力いただき、そこからスピーディに変化できたと考えています。

―社内の雰囲気はいかがですか。

物延:
事業変革を推進する体制になってからちょうど1年になります。「結果としてどうなるか」が勝負でしたが、事業的にも非常に良い形で経ることができました。変革することで未来が開ける、実際に開けた、という実感と共に、どんどんチャレンジしたいという機運が生まれてきています。特に若いメンバーたちは、自ら変わっていくような経営姿勢を応援してくれますし、自分もそうなりたいという連鎖も生まれてきている感触があります。

佐々木:
素晴らしいですね!

―体制が変わる際、不安や心配を抱えたメンバーがいる中で、どのように引っ張っていかれたんですか。

物延:
メンバーと対話することを大事にしました。変革に際して清掃員の方から役員まで、全員と話した経営者の例があると、佐々木さんからヒントをいただいたんです。新体制になってから半年は、単純に会議室で「どう思う?」というだけではなく、新人メンバーの営業同行なども含め、きめ細かく一人ひとりに対して徹底して会話を重ねました。

佐々木:
大きく舵を切るときは、やはり対話が大事ですからね。
業績としても良い結果が出たと伺っています。

物延:
もちろん結果も出さなければならないので、この1年はとにかく走りきると決めていました。すでに2年ほど検討してきたサービスや事業開発は、スピーディに形にすることに注力しました。トップダウンで結果を優先しましたが、実際に数字が上がったことで社内の士気も上がりました。

■今後10年のビジョンと、エグゼクティブ・コーチングを同時並行で実施する効果

佐々木:
ちょうど結果が出てきた頃、今後10年のビジョンを推進するのと同時に、弊社のエグゼクティブ・コーチングも受けることを決められました。その理由について教えてください。

物延:
直近1〜3年くらいであれば、それなりに収益を高めていくのは可能だろうと思うんです。でも、社として実現したい世界観は「アジアを代表するコミュニケーション・カンパニーになる」こと。
それを実現するためにどうするか? を考えると、長期的な視点やその実現のために会社という器の中で、新しい力をどのように設計していくか? という視点を持つ必要があると思ったんです。同時並行でやろうと思ったのは、今からやらないと間に合わなくなると感じたからですね。

佐々木:
コーチングのようなことはどちらかというと苦手なタイプの方だと思っていたので、ご自身でそれを決断されたのはすごいなと思いました。

物延:
そうですね(笑)。コーチングに対しては、苦手というより「受けることで自分は変わるのか? あまり影響ないのではないか?」と思っていました。
ただ10年後の会社のありたい姿を考えたとき、今、このタイミングだと思ったんです。
自分は周りを気にせずガンガン突っ走るほうなのですが、自分だけで積み上げるものはたかが知れている。もう一度自分を客観視して、今の自分に無いものを意識することも大事だと思いました。

佐々木:
10年ビジョンや戦略を詰めながら、同時にコーチングを受けて、いかがですか。

物延:
それぞれ別々で走っているのに、ループしているというか、リンクしているのが不思議でした。事業戦略はもともと自分が目指していたことでしたが、それは個の体験に紐付いているんですね。
コーチングは、自分がもともとどういう人間なのか? を壁打ちのような対話をしながら客観視していくことですよね。コーチングの一環で実施した調査でも自分がどのように見られているのかを知り、自分という存在にひたすら向き合いました。そうすると、今やっている事業や自分の中から出てきた事業が、次の10年に何を目指すのかということとすごく関連性があって。
迷いがないというか、全てが必然に思えるようになりました。

客観視するということは、余計な贅肉を削ぐような作業に近いと思います。
「自分には実はこういうことがあったんだ」というような気づきではなく、もともと言っていたこと、目指していたことと、現時点が「確かなもの」になる。ぼんやりとあったもの、散らかっていたものがConncting Dotsじゃないですけど、つながってきたような感覚です。

そして「この先10年、何を本当に目指したいのか?」を具体的なプランとして考え、言葉にすることで、どんどんメンバーに浸透している感触を持っています。言霊化して「やるぞ!」という覚悟に変わったんだと思います。
10年ビジョンとコーチングを受けたことで、みんなの人格がどんどん1つに交わってくる感触がありますね。

佐々木:
社内の士気も上がってきたとおっしゃっていましたが。

物延:
ピラミッド型の中央集権的なアプローチではなく、分散化しそれぞれが共鳴し合うことが、21世紀型の価値観です。自分たちの体制や組織も、その価値観にフィットさせていく中で、メンバーが理解してくれつつあると思います。
全体に向けた方針発表の前、経営幹部を含め次世代をリードしていくような人たちに、自分の考えをじっくり話す機会を設けました。そこから、彼らもどんどんメンバーを引っ張ってくれるようになってきたので、現場のメンバーもミドルマネジメント層と言われる人たちも、それぞれ変わってきた半期だったと思います。

佐々木:
必要なステージだったとは思いますが、新体制になってからの1年は「言ったからには結果を出さないと」と緊張感があったような気がします。
でも、今日お話を伺っていて、肩の力が抜けたというか、以前とは全然違いますね。
結果を出すことにコミットされていたフェーズは、危機対応モードというか(笑)。そのフェーズを経て結果も出されたことで、今はみんなで作っていく未来を語る経営者になられたように思います。

物延:
自分のやっていることは分かっているつもりなんですよ。ただ、10年スパンの視点を持って、今のままではダメだなと思ったら、コーチングなどで客観視するのは大事だと思います。
私は360度調査で、行動特性として「独裁的」のスコアが高く、そのことは自己認識もしていました。でも、コーチングって、ただ単にスコアを見るだけではありませんよね。それをどのように捉え、アプローチしていくかについて、考え方をセットするものだと思います。自分がどういうスタンスを持つのかによって、次の行動は大きく変わりますが、コーチングを通じてさまざまなエッセンスをいただくことができました。

■コアな課題を抽出し、ダイナミックな変化を生む

佐々木:
初めてお会いしたときから、顔立ちや雰囲気だけでなく、使う言葉も変わられましたね。

物延:
意識的に変えてはいませんが、今大事にしていることが自然に言葉として出てきているんだろうと思います。ということは、考え方が変わったんでしょうね。

現在の体制に変革するに至る流れの中で思ったことなんですが、チェンジウェーブのように「何がボトルネックなのか?」というコアな部分を突いてくれる方はなかなかいません
「エンジニアリング的にここをこうしたほうがいい」「シリコンバレーでこんなことがあるから、これをベンチマークにすれば」というような情報をリサーチしている方はいらっしゃいますが、ダイナミックな変革につながるような「何のボタンを押せば良いのか?」を突ける人は少ない。
我々が一番欲しいと思っていたのはそういう視点で、佐々木さんであればそのボタンをどんどん押してくれるのではと思って相談したんですよ。

佐々木:
それは本当に光栄ですね。

物延:
情報をたくさん知っていることよりも「気づく」ことのほうが大事だと思うんです。業界や関連情報については、我々も当然知見として持っていますが、全く違う視点で気づきをいただきつつディスカッションをするほうが、より骨太でダイナミックなものを作ることができます。実際、佐々木さんにお話しいただいたことが、かなりヒントになりました。

例えば「やるなら破壊感があることを目指せ」と言われたことですね(笑)。
「成長を目指すならリニア(直線的)な成長ではなく、業界を壊すほどの勢いで破壊的な上がり方をしていく必要がある」「スパイスボックスが競合他社だった場合に何をすれば潰すことができるのか」という言葉は印象的で、視点が変わりました。

佐々木:
物延さんは以前から「次世代のリーディングカンパニーになるんだ」とおっしゃっていましたから、今の世界を壊すようなことを仕掛ける必要があるんじゃないか、と思ったんです。今の延長線上の成長戦略ではなく、今の前提条件が崩れるような世界をつくるのが、次世代のリーディングカンパニーなのかなと。

物延:
業界の中にいる自分たちは「何を壊せばいいのか」を一番知っているはずなんです。それをイメージしながら事業戦略を立てるというアドバイスは、すごく腑に落ちました。
枝葉の部分、どういうサービスにするかを考えていた自分たちが、根っこや太い幹の部分に気づくことができたのは大きいですね。

佐々木:
チェンジウェーブは「変革屋」と名乗っています。よく分かりにくいと言われるんですが、物延さんから見て、何が価値だと思われますか。

物延:
問題のコアを見つけることが一番の価値だと感じています。大事なのは、何をもって「変革」とするか? だと思うんですね。表面上の些末な問題はたくさんありますが、それを全部取り除いたときに何が一番コアなのか。それを質問力やファシリテーション力で素っ裸にしてくれるんですよ(笑)。
「課題解決」ってみんな使う言葉ですよね。でも、その「課題」をどう捉えるのかが一番大事で、余計な課題を解決しても仕方ない。チェンジウェーブさんは、コアな課題を抽出することで、結果的にダイナミックな変革につなげているんだと思います。

佐々木:
自分たちのやっていることを表現するとしたら何だろう? と社内で話していたんですが、そう言っていただけて腑に落ちました。とても光栄です。ありがとうございました!

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