Why Diversity #4「21世紀型マネジメントと無意識バイアス」

2018.11.20

2018.11.20 ChangeWAVE

チェンジウェーブが「なぜ多様性推進に取り組まなくてはならないのか?」をテーマに開催しているイベント「Why Diversity」。
4回目となる今回のテーマは、前回に引き続き「無意識バイアス」です。

チェンジウェーブは、マネジメント層の方々を対象にしたe-learningツール「ANGLE」を2018年5月にローンチ。10月までの5か月間で500名以上の方に受講いただきました。今回はそのデータも含めてご紹介します。

第1部の基調講演では、リクルートワークス研究所 主任研究員 人事研究センター長 Works編集長の石原直子様にご登壇いただきました。
第2部のパネルディスカッションでは、企業のダイバーシティ推進のご担当者をお呼びし、現場での無意識バイアスの実情などをお話しいただきました。

チェンジウェーブ代表取締役社長 佐々木裕子よりご挨拶

会の冒頭、チェンジウェーブ代表の佐々木より、過去3回のWhy Diversityの振り返りと、今回のテーマである「無意識バイアス」について、現状をご紹介しました。

「無意識バイアス」を巡る現状


チェンジウェーブ 佐々木

Google画像検索で「ビジネス」を検索すると、大半が男性の画像でした。あるタイミングで検索した際、1ページに出てくる人数は28人。そのうち男性が23人、女性が5人という結果でした。「ビジネス」という言葉から無意識にイメージするのは男性が多いのです。

さらに「経営者」で検索すると、1ページ目は全員男性でした。女性が出てきたのは44人目。「経営者」=男性というイメージが多いことが分かります。

チェンジウェーブが提供する「ANGLE」というeラーニングツールは、すでに約500名の管理職の方々に受けていただいています(2018年10月現在)。その回答から分かった幾つかのデータをご紹介しましょう。

「男女に差がないと思っているか」という問いでは、ほとんどの方が「そう思う」と回答しますが、「仕事の遂行能力について、男女差はないと思っているかどうか」という設問に対しては26%が「そう思わない」と回答。「仕事の遂行能力」と限定したことで、男性のイメージに影響されているのだと推察できます。

「経営会議のメンバーは、男女同数であるべきか?」という問いには、ほぼ半数以上が「そう思わない」と回答しました。本来、適性があれば男女どちらでも良いはずですが、ここにも無意識バイアスが影響している可能性があることが分かりました。

実際にインプリシットアソシエーションテスト(IAT)という、無意識バイアスを計測するツールで定量化すると、日本企業の管理職の方々は「男性=仕事/女性=家庭」というイメージを持っている方が多いことが分かりました。バイアスは脳のパターン認識、誰しもが持っているものなので、コントロールしなければ無意識で認識してしまうことになります。

同様に「女性から『自信がない』と言われると、過度な負担をかけないよう配慮しなければならないと思う」「女性に厳しいフィードバックをするのは躊躇する」という設問に対しても、3割以上の方が「そう思う」と回答しています。
男性には厳しく、女性には優しく――男性はリーダーで、女性はサポーターという性別バイアスも、どうやら存在することが分かりました。

性別だけでなく、年齢によるバイアスもあります。
「新規事業開発責任者の候補者採用の際、以下の年齢の人を採用するか?」という設問に対し、「25歳・55歳・18歳」の3つの選択肢では、25歳と答える人が多く、「新規事業」=若手のイメージがあると想定できます。

その他、年齢バイアスに関しては「今の部署では、男性が長期の育児休暇を取りたいと言えないだろう」「若手が大事な飲み会を断ると違和感を抱く」など、ミレニアル世代との世代間ギャップがバイアスになっているケースも見受けられました。

これらのバイアスは多様性推進に対し、大きなハードルになります。

基調講演:無意識バイアスの最新トレンドについて

基調講演は、リクルートワークス研究所人事研究センター長の石原直子様に、無意識バイアスのトレンドやご自身が経験したバイアスについて、ご講演いただきました。

※当日は石原さんが編集長を務める、リクルートワークス研究所の機関誌『Works』150号を参加者の皆さまへご提供いただきました。
150号の特集は「組織を蝕む無意識のバイアス」。チェンジウェーブのe-learningツール「ANGLE」による管理職の無意識バイアスデータやIATを開発したワシントン大学の教授インタビュー、バイアスをなくすことに取り組んでいる企業の事例などが掲載されています。

『Works』は以下より全文ダウンロードいただけます(外部サイトに移動します)
http://www.works-i.com/publication/works/


基調講演 石原様

先日、とある大学の入学試験で、男子の入学者が多くなるよう、女子受験者の得点を一律30点低くしていたというニュースが日本を駆け巡りました。その後、文部科学省の調査によって、他の大学でも同様の事例が幾つも報告されました。

世論は「これは許されない」という論調でしたが、これを採用に置き換えるとどうでしょうか。
「企業の採用で、男性の入社者が多くなるよう、女性の面接通過人数を制限していた」ことに対し、「それは絶対におかしい」という回答は半数以下になることもあります。

一般論では「性別で差別されるのは変だ」という感覚を持っているのに、同じことを企業に当てはめたときに「変だ」とはあまり思わない。これが無意識バイアスです。

無意識バイアスの問題点は、大学がやったら変だと思えるのに、企業がやっても変だと思えないこと。そしてそれだけでなく、自分の中でその答えに対する理由を作って理論武装してしまうことだと思います。

「ANGLE」の「役員は男女同数であるべき」という設問では「そう思う」の割合が減ります。「男女同数でなくてもいい」と思った自分を正当化する理屈を思いつく。これが無意識バイアスの厄介な点です。アメリカでは、このような発言をするとセンスがないと言われますが、なぜか日本では何となく流される・許される雰囲気がまだまだあります。

無意識バイアスは、ダイバーシティ&インクルージョンをネガティブにするだけではなく、イノベーションを起こりづらくさせるといわれています。
働き方改革やダイバーシティ&インクルージョンの話をする際、「早く帰るよう指示したら部下がもっと仕事したいと訴えてきた。この場合、上司としては何と答えますか」とよく問いかけます。

よくある答えは「職場にいるだけが仕事じゃない。家に帰っても、資格や英語の勉強をするなど、自己啓発することもできる」というもの。しかし、それではイノベーションが起こる可能性は低いでしょう。

シューペンタ―の定義によると、イノベーションとは「異なる知識と知識の新結合」です。

とある会社では、働き方改革によって定時に仕事が終わるようになり、エンジニアを対象に社内勉強会を始めたそうです。でも、同じメンバーでずっと一緒にいて、同じ内容の勉強をしている。それでは、誰もが同じことしか知らないという状態になりかねません。「異なる知識」が少ないのでイノベーションは起こりにくくなるのです。

自分とは異なるものの見方をする人、自分とは違う発想で物事を捉える人たちと、どれだけ一緒の時間を過ごせるかが、無意識バイアスにもイノベーションにも有効だと考えられます。

IATを受けると、バイアスが全くない人はほとんどいません。データでも、約90%が何らかのバイアスを持っているという結果が出ています。私自身にもバイアスがあります。

みなさんもバイアスのせいで、自分自身が損をしたり、組織に損をさせたりしている可能性は充分にあります。ぜひ振り返ってみていただきたいと思います。

パネルディスカッション

パネルディスカッションは「企業事例とデータから見るダイバーシティと管理職の意識改革」と題し、以下の方々にご登壇いただきました。

    • リクルートワークス研究所人事研究センター長 石原直子様(以下「石原様」)
    • 帝人株式会社 人財部 ダイバーシティ推進室長 日高乃里子様(以下「帝人 日高様」)
    • 株式会社アシックス 人事総務統括部 人財開発部 教育研修チーム兼ダイバーシティ&インクルージョン推進チーム マネジャー 増田桂子様(以下「アシックス 増田様」)
    • 株式会社チェンジウェーブ 副社長 藤原智子(以下「藤原」)

 

  • (モデレーター)株式会社チェンジウェーブ 代表取締役社長 佐々木裕子(以下「佐々木」)

 

なぜ今、無意識バイアスなのか


帝人 日高様

石原様:
無意識バイアスについては以前からも注目されていましたが、アメリカではトランプ政権になってから特に注目されるテーマになりました。それが日本にも飛び火した形だと思います。

帝人 日高様:
私がダイバーシティ&インクルージョンの仕事を始めて5年目になりますが、部署の歴史は古く2000年に専任部署ができました。

当初より、女性社員の母数を増やすために「女性を3割以上採用する」と決めて採用活動をしてきたようです。異動してきた私にとっては、女性に下駄を履かせるような気がして、違和感しかありませんでした。

しかし蓄積した採用データを見てみると、女性を3割以上採用できた年ではエントリーに対する合格率は男女同じくらいだったのです。逆に3割を切る年は、エントリーに対する合格率は男性のほうが高い、つまり男性の合格ハードルを下げていることが分かりました。

弊社の採用力では、女性を3割以上確保しなければ公正な採用ができないのだとデータを見て納得できたのです。数値目標というのは、採用担当の「バイアス」をなくすという意味でも必要なものなのだと実感し、この数値を示すことで、3割以上採用することを目的とする意味付けを示すことができるようになりました。

バイアスは私にもあるし、誰にでもある――それを「データ」で示すことができれば理解が得やすいと時間しました。

アシックス 増田様:
当社は昨年まで「ダイバーシティ推進(人財の多様性)」を目標にしていました。今年はそれを一歩進めて、多様な人材の価値観が会社内で活用される状態=インクルージョンを目指すことを大きな目標に掲げています。

シニアや若者、女性などさまざまな属性の社員がいる中で、その多様性を活かすことが重要ですが、まだ課題があると感じる部分もあります。特に女性の観点では、管理職候補の女性が育っていないというのがデータから見えてきたのです。

その原因を探ったところ、女性の育成機会が少ないのではという現状が浮き彫りになりました。なぜ女性の育成機会を創出できなかったかを考えた結果、アンコンシャス(無意識)のバイアスがあるのではと気づき、今はそれを理解し、行動を変えていくことが大事だと、取り組みを始めたところです。

実際に取り組んでみての手応え・難しさ

アシックス 増田様:
当社は「ANGLE」を取り入れ、管理職を中心にバイアスの理解と行動変容に注力し始めたばかりです。そこからの気づきとしては、性別に加えて年齢バイアスも課題の1つであるというものでした。
会社としては、もっと若手にいろいろな意見を出してもらい、今後イノベーションを生み出す存在に育ってほしいという思いがあるものの、実際の現場はシニア層を尊重する風土があり、若手が意見を言いにくい状態になっているようでした。会社の期待とは逆の行動が取られていることを「ANGLE」を受けた管理職のメンバーが気づいたのは、大きな収穫だったと考えています。

意識しなければ、日々の行動の中で流れていってしまいますが、一旦止まって考えるという意味では、スタート地点に立てたのではと感じています。

帝人 日高様:
今の「意識する」という話に関連して、帝人は課長以上は部下の中から次の候補を選出し、名前を入力して人事に提出する機会があります(サクセッションプラン)。

これまでは、大部分の管理職が男性なので、無意識に男性を管理職候補に選ぶ傾向が強く出ていました。そこで女性欄を付け、「女性の名前も書く必要がある」と気づく仕組みを作りました。最近は「女性欄ではなく、通常の欄に女性の名前も書いていいんですよね」と気づく人も増えてきました。
「立ち止まって考える」機会を提供するような仕掛けがあると、バイアスに気づき、行動を変えられるように思います。

石原様:
まさに「意識化する」ことが無意識バイアスをコントロールする最初のステップです。
もう1つ重要なのが「拙速に答えを出さない」こと。我々ビジネスパーソンは、スピードが早いことが大事だと言われていますが、バイアスに関しては違うと考えています。
サバンナで生き残るか否かという時代からバイアスは存在しますが、その頃とは大きく違う命題に立ち向かい、戦略も長期化している現代では、ゆっくり考えることが必要です。

海外カンファレンスで得た「企業カルチャーを変える」3つのポイント


チェンジウェーブ 藤原

佐々木:
藤原は先日、海外のCEOたちが集まるカンファレンスに出席しました。海外では経営トップが無意識バイアスにどのように取り組んでいるのか紹介してください。

藤原:
脳科学者が脳科学の知見をリーダーシップに活かせないか? というインサイトを共有するようなカンファレンスでした。
無意識バイアスもトピックの1つでしたが、イノベーションを起こすためには既存の企業カルチャーをどうやって変えていくのかについても、熱の入ったディスカッションが交わされていました。

カルチャーを変えるためには、当然行動が必要です。その行動を変える際、3つのポイントが重要だという話がありました。それは「Priority(優先順位)」「Habit(習慣)」「System(システム)」です。

プライオリティに関しては、会社の経営者がどのような基準で物事を判断するのか、明確かつシンプルな言葉で「リーダーシッププリンシパル」を作ったほうが良いとのこと。さらにリーダー自らが、そのプリンシパルに従って行動に落とし込んでいくことが何よりも大切です。メンバーではなく、まずは経営者から、と盛んにおっしゃっていたのが印象的でした。

習慣に関して、どうやって習慣を変えていくのかというと、「小さな成功体験」の積み重ねが有効です。 それをどうやるのかがポイント。
システムは、仕組みに落とし込む話なので、人事制度や制度設計まで関わってきます。
これら3つが合わさると、カルチャーは上手く変わっていくという話題がありました。

石原様:
ダイバーシティ&インクルージョンも、カルチャーを変えるのも、日本企業は「草の根から」と言いがちです。現場の力で変わってほしいと言われるのですが、これらの命題に関しては、トップダウン以外で変わるのは難しいと思います。海外で取材しても、トップダウン以外での行動変革はあり得ないと言われます。

トップ層はどのように自分の無意識バイアスに気づけるか


アシックス 増田様

佐々木:
無意識バイアスに関して、やはりトップ層が「自分にも実はバイアスがある」と理解し、意識的にマネージしないと上手くいかないように思います。
経営トップ層はどのようにご自身の理解を推進すれば良いと思いますか?

石原様:
自分にとって「心理的安全」が確保されているかどうかが大事だと考えています。セーフティな場でしか、自分にバイアスがあるとは認められないはずです。
「ANGLE」はeラーニングなので、誰かと共有しなくて済むのが利点ですね。講師や人事にも見られることなく、自分でやって自分で気づく仕組みになっているのは、すごく良いと思います。

佐々木:
「ANGLE」のコメントを見ていると(※)、確かに公の場では発言しないだろう赤裸々なコメントがあるように思います。「心理的安全」は大事なポイントかもしれません。

※チェンジウェーブは「ANGLE」内に記載された回答を確認することができますが、回答、コメントで個人が特定されることはありません。

年齢バイアスは今後大きなテーマになる

佐々木:
ここまで性別バイアスの話が出ましたが、今後は年齢バイアスが大きなテーマになってくるのではと感じています。

アシックス 増田様:
当社にとっても、シニアの活用は今後大きなトピックの1つになってくると考えています。特に、シニア層の方々が活き活きと働いているのを見て、若手を含む下の層が「将来自分たちも彼らのように活躍し続けたい」と思える環境を作る必要があると感じています。
これまでシニア層に対するトレーニングプログラムはほとんどありませんでしたが、来年度は実施する予定です。


無意識バイアスは誰もが持っているもの――そう認識した上で、いかにコントロールしていくかが大切です。

今後テクノロジーの発達により、無意識バイアスをマネージする上でITが役立つ領域になるのではと私たちチェンジウェーブは考えています。
弊社の提供する「ANGLE」に限らず、対人では難しいこともテクノロジーによって可能になる、そんなツールがこれから増えてくるのではと思います。

無意識バイアスをいかにマネージしていくのか? テクノロジーに落とし込む際、いかに調整をしていくのか?――今後、日本だけでなく世界においても大事なテーマになっていくはずです。

チェンジウェーブも、テクノロジーで変革を起こすことはできないか、大きなチャレンジをしていきたいと考えています。

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