変革屋がHRテックで無意識バイアスに挑む

2019.10.21

2019.10.21 ChangeWAVE

チェンジウェーブでは、2018年、無意識バイアス(アンコンシャス・バイアス)マネジメントのためのe-learningツール「ANGLE」を開発しました。
なぜ変革屋が「無意識バイアス」にHRテックで取り組むのか、副社長・藤原智子がお話しさせていただきます。


藤原智子/e-learningツール「ANGLE」責任者
企業のダイバーシティ推進コンサルティング、実行支援に数多く携わる

新たな可能性を生み出すためのチャレンジ

現代は「課題解決」よりも「本質課題の発見」がより難しくなっている。
企業変革に携わるチェンジウェーブにも、本質課題を明らかにしてほしいという依頼は多く頂く。コンサルティングを進める過程で、当事者が思いもしなかった場所から課題が発見されることもままあるが、本質課題が特定できれば、解決策はおのずと透けて見えてくる。

しかし、「無意識バイアス」は、それ自体が本質課題だと認識することさえ難易度が非常に高い。

例えば、ダイバーシティ推進の一丁目一番地である「女性活躍推進」で考えてみる。
女性管理職比率の向上は多くの企業が目標としているが、思うように進まない。理由としてよく言われるのは、マネジメント層に「女性にリーダー職は難しい」「女性に難易度の高い職務を任せるのは可哀想」などという思い込みがあり、管理職候補者になかなか女性があがってこないというものだ。また、メンバー層にも「男性の方がリーダーに向いている」「育児中は周囲に迷惑をかけるので、サポート業務にまわったほうがいい」などの思い込みがあり、管理職やリーダーになることに躊躇をする女性が多い。

こうした思い込みが「無意識バイアス」と言われるものだが、本来力を持っている人材への機会提供を阻み、適材適所を難しくし、生産性の向上を妨げる原因となっている。女性活躍だけではなく、昨今ではシニアや若手の活用・登用にも影響がある。
もちろんこれは日本に限った話ではなく、Googleなどのグローバル企業でも数年前から無意識バイアスへの対処を社員教育に取り入れているほどだ。

では、なぜ課題として認識することが難しいのか。
実は日本でも、外資系企業を筆頭に、管理職研修などの場で無意識バイアスの悪影響について取り上げる企業はあった。管理職層が知識を得たうえで自分自身の言動を振り返る、といった内容の研修が一般的だったようだが、実施してみると「自分に無意識バイアスはない」「自分は皆に平等に対応しており、問題は起きていない」とする管理職が多いと言う。

これは日本に強く見られる協調性文化・性別役割分担意識の影響が大きく、「個々の違い」を認めるコミュニケーションが環境的に求められてこなかったこと、また、ダイバーシティ推進の追い風の中で、直感的に悪いものだと思われがちな「無意識バイアス」を認めることへの抵抗が思った以上に大きいことなどから起きると考えられる。
しかし、こうした背景があるため、管理職の行動変容どころか、無意識バイアスの存在を認知するまでにも至らず、課題として認識するにはほど遠いという状況が生まれる。

無意識バイアスに対処しない限りダイバーシティは進まない、個を活かす働き方やチームでの協働にも悪影響が出る……ダイバーシティ先進企業であってもこうした課題感を持つ企業は少なくなかった。

どうしたら一人ひとりが自分の無意識バイアスの存在を認め、行動変容まで導けるのか。
また、働き方改革などの影響で管理職の業務負担が高まる中、本人にとって顕在化しておらず優先順位の低いこの課題(しかし当然、企業にとって優先順位は高い)にどう取り組んでもらうか。人と組織の変化を仕掛けてきた変革屋としてのチャレンジがそこにあった。

ANGLE設計に込めた3つのポイント

我々の最大の強みは徹底したリアルへのこだわりと確実な変化を生むこと。そこにメンバーの多様な知見を踏まえて議論を重ね、以下3点を大きな特徴として設計した。

1)「無意識バイアス」を可視化し、認知を促す
意識にないものを意識するアプローチとして「実は内在するもの」を可視化する手法はないかと考え、無意識バイアスの可視化を試みた。
グローバルではメジャーな、無意識バイアスを定量的に測定できるIAT(Implicit Association Test)という技法を用いて「性別」「年齢」の無意識バイアスの可視化を行った。研究者の知見を取り入れ、日本人ならではの無意識バイアスが精度高く測定できるように独自設計している。
また、他受講者の測定データとの比較を用いて「無意識バイアスは自分だけにあるのではなく、誰にでもある」という現状をリアルに提示。データで理解することで無意識バイアスに対する受容度を上げる工夫をした。

2)「気づき」のプロセスを丁寧に設計、自分事へ促す
チェンジウェーブには、変革の過程で見聞きした数多くの組織や人の変容プロセスやパターンの実績がある。それに準じつつ、e-learningというクローズドな場で個々の変容を促すための気づきのプロセスを新たに編み出し設計していることも特徴の一つだ。
あえてe-learning形式にしたのも、忙しいビジネスパーソンへの導入障壁を下げるだけではない。無意識バイアスというテーマの特性から、「一人で取り組める」、より内省しやすい環境を作ることを考慮したからである。
また、無意識バイアスが引き起こす弊害を表すために、管理職・一般社員が遭遇しがちな生々しい事例を用い、より深い気づきを促すための「問い」にも拘った。

3)自然と1歩踏み出す「仕掛け」、コントロールを促す
我々が変革をデザインする時にとても重要視するのは初めの1歩だ。
リアルにどうやって行動変容の初めの1歩を踏み出してもらうか。また、そこに至るまでに、場や受講者のマインドをどのように醸成していくか。脳科学の知見と変革屋の知見を織り交ぜ、具体的な無意識バイアスのコントロール手法を提供し、プログラム後半で初めの1歩を踏み出してもらう場を設けている。自然と1歩が踏み出せるような「仕掛け」である。

HRテックで行動変容を起こす

リアルな研修と違い、クローズドな学習環境であるe-learningで、どこまで無意識バイアスへの認知と行動変容を促せるかが当初のチャレンジだった。

現在の受講者アンケートでは(2019年9月時点)

と高いご評価をいただけている。

※その他、受講者データはこちらから

顕在化していない課題を認知してもらい、解決のために行動変容を促すe-learning ANGLEは「認知+行動変容」へのチャレンジであり、我々がHRテックで「人」を介さない変革の手法を確立するという取り組みでもあった。
現時点ではその手法として一定の手応えを感じており、日本の人事部・HRアワード2019では優秀賞受賞という栄誉にあずかった。今後、受講者や導入企業へのヒアリングを重ね、さらにANGLEを改良することで、社会全体により大きな変革の波を広げていきたいと考えている。

<関連記事>

◆「無意識バイアスをマネジメントする」 人事実務2019年8月号
https://changewave.co.jp/2019/10/01/jinjijitsumu-bais-201908-2/
◆HRアワード2019、e-learningツールANGLEが優秀賞を受賞
https://changewave.co.jp/2019/10/21/angle-hraward2019-2/
◆管理職向けダイバーシティセミナー 事例紹介
https://changewave.co.jp/2019/03/04/examplereport0306/

 

ChangeWAVE

close
Company Recruit Magazine MISSION SERVICE PRODUCT MEMBER ARTICLE MEDIA CONTACT DOWNLOAD