アンコンシャス・バイアス対処を全社に広げていくには
りらいあコミュニケーションズ株式会社様 事例紹介
※記事内容は2022年12月取材当時。りらいあコミュニケーションズは、KDDIエボルバ
と経営統合し、2023年9月1日より「アルティウスリンク株式会社」となりました。
ダイバーシティ推進を重要な経営戦略の一つとして位置づけているりらいあコミュニケーションズ株式会社。多様な雇用形態の導入、ライフプランに合わせた働き方の支援など、多様な人材が働きやすい環境づくりを進められる中で、アンコンシャス・バイアス対処についても力を入れて取り組んでいらっしゃいます。
「誰にでもある」アンコンシャス・バイアスを認識し対処を続けるには、社内の多くの人が理解し、共通言語とされていることが重要です。
本レポートでは、経営層、管理職、一般社員層とレイヤーにあわせて学習機会を作り、行動変容を促した取り組み事例をご紹介します。
お話を伺ったのはりらいあコミュニケーションズ株式会社 人事本部 人事企画部 キャリア開発室の室長 並木佳純さん、大森雪江さんです。
(聞き手:株式会社チェンジウェーブ 上席執行役員 鈴木富貴)
りらいあコミュニケーションズ株式会社様
人事本部 人事企画部 キャリア開発室 室長 並木佳純 様(写真右)
人事本部 人事企画部 キャリア開発室 大森雪江 様(写真左)
働く人たちが働きやすく、
イキイキと活躍していることは
企業としての優位性にもつながる
―ダイバーシティ推進に取り組まれている背景や理由についてお聞かせください。
並木様
当社はBPO(Business Process Outsourcing)サービス企業として全国で約2万人のスタッフがコンタクトセンターやバックオフィスなどのBPOサービスに従事しています。
当社の中心は「人」であり、「人」が活躍することは当社の価値を高めていくことにも資するため、働きやすい環境づくりは必須だと以前から感じていました。
また現在は、労働人口の減少に伴い、採用環境は年々厳しくなっています。こうした時代に、採用に大きく影響してくるのが実際に働いている人の声です。働いている人がイキイキと活躍しているかどうかという点が重視され、企業としての優位性になります。
まずは「今、働いている人が働きやすい環境にするためにはどうしたらいいか」を一義的に考えたとき、ダイバーシティへの向き合い方というのは大きなキーワードであったと感じています。
―それぞれの個性、いろいろな働き方や価値観を認めていこうという流れですね。
並木様
コンタクトセンターをコールセンターと呼称していた頃のイメージですと、「女性が多い」という印象があったと思うのですが、現在は変わってきています。男性も女性もいますし、年齢も大学生から60代の方まで活躍しています。案件によっては外国語対応も必要ですので、日本人に限らず海外の方も働いていらっしゃいます。
コンタクトセンターでは、実際これだけ多様な人材が活躍し「既に多様性がある」のですが、それは積極的にダイバーシティを進めた、という捉え方ではなく、業務の最適を求めた結果こうなった、という側面があります。
それをきちんと言語化して「ダイバーシティに取り組む」と捉え直したのは、ここ数年のことです。
多くの人が活躍できる環境を整える「土台」として
アンコンシャス・バイアスに取り組む
―そうした流れの中で、アンコンシャス・バイアスに注目された理由は何ですか?
大森様
環境整備には取り組んでいるものの、以前から何かうまく進まない原因があるように感じていました。子育てをしながら管理職をしている女性が少ない、というのも一例です。「管理職には時間制約がある社員は向かない」というイメージが強いのかと思っていた頃、アンコンシャス・バイアスという概念を知りました。これを皆さんに知っていただくことで、意識、考え方、判断が変わってゆくと思い、取り組みを始めました。
並木様
当社の男女比や年齢層などをレイヤーとして見ていくと、上に行くほど女性が減少している傾向が見られます。コンタクトセンターのマネージャークラスになってくると、仕事と家庭を両立したい方には働きにくい事実があるのではないかと分析しました。もちろん、これは男女問わずの課題です。
そのため、現状を「そういうもの」と放置せず、さまざまな働き方を考え、多くの人・みんなが活躍しやすいような環境を整えるために、まずは「そういうもの」「当社の当たり前」、つまりアンコンシャス・バイアスに取り組もうと考えました。
―御社では経営層から管理職、一般社員まで広く取り組まれたと伺っています。具体的な進め方や成果などをお聞かせください。
大森様
まずはチェンジウェーブ社のeラーニングツール・ANGLEを管理職に受講してもらいました。ANGLEのIAT(アンコンシャス・バイアス測定テスト)では、自分ではコントロールできないバイアス傾向(結果)を数値で確認することができます。可視化により、受講者は納得感を持って結果を受け入れられました。細切れで学習し、全部合わせても1時間ほどの学習のため、忙しい方たちにも負担なく受講いただけました。
並木様
成果としては、アンコンシャス・バイアスというワード自体が浸透し、バイアスとは「誰にでもあるものだ」という認知がされたと思います。「自分の持つバイアスの存在を踏まえて考える」とか、「何らかの判断を行う際にバイアスが働いている可能性を含める」などという声が受講後のアンケートで聞かれました。
翌年学びを定着し、具体的な行動に移してもらえるよう、ANGLE受講後の管理職にはオンラインで集合研修を実施し、本部長、部長クラスの研修には役員もオブザーブで参加してもらいました。
研修では、ANGLEの受講結果、当社のバイアス傾向なども示してもらいましたが、受講者は結果を素直に受け止めていて、前向きに取り組んでいくという声が多かったです。「気づくと身近な人、話しやすい人だけに意見を聞いているので、もっといろんな人に聞いてみよう」など、研修内容を取り入れ行動に移そうとする意見を聞くことができました。今後のコミュニケーションが変わる材料も提供してもらえたと感じています。
―一般社員の方向けの啓発動画もご利用いただいています。学びを一般社員の方にも広げようと思われたきっかけはどういったことでしたか。
並木様
当社のコンタクトセンターや事務センターといった現場には、オペレーターである契約社員やアルバイトの方々がいらっしゃいます。この現場を一般社員がマネージャーとして束ねていくことになりますが、現場で働いてくださっている方々は、性別も年齢も国籍もそれぞれ違いますので、やはりアンコンシャス・バイアスの知識は必要であろうという判断です。
また、自身の働き方を考える、という点でも大事だと思いました。
今は自律した働き方が必要な時代です。当社で働く人たちは、自分の中にバイアスがあるということを認めた上で、それを働き方やマネジメント、事業にどう生かすのかと考えて取り組んでいただけたらと願っています。
大森様
バイアスというものの存在をお互い知っていることは、心理的安全性のある職場づくりにもつながると思います。違和感、違いがあって当たり前だということがお互いにわかっていれば、もっと違う意見が言える環境になります。
管理職だけが理解していた「アンコンシャス・バイアス」が一般社員にも認知されれば、社員から管理職に対して、「それはバイアスではないか」や、「ちょっと違和感を覚えます」と言えるようになり、そして管理職もその指摘を受け入れることができ、変化に繋がると考えたからです。
「アンコンシャス・バイアス」という共通言語を持つことで、風通しが良くなって相乗効果が生まれ、より働きやすい環境になると思っています。
並木様
知識が一度で定着し、持続するというのは難しいことですから、今後も定期的な学びの機会は必要だと考えています。どういう気づきがあって、どう取り組んでいくのか、個人の学びもアウトプットして共有し、「心理的安全性」に基づいたコミュニケーションができる会社を目指したいと思っています。