I&Dを経営戦略として捉える
~NEC様 事例紹介〜

2023.2.6

2023.2.6 ChangeWAVE

I&Dを経営戦略として捉える
~NEC様 事例紹介〜

インクルージョン&ダイバーシティ(I&D)とは、経営/事業における成長戦略そのものだと位置付けているNEC。インクルージョンが発揮されて初めてダイバーシティに価値があると考え、あえてインクルージョンをダイバーシティの前に置いています。
本レポートでは佐藤千佳さん(人事総務部門 コーポレートエグゼクティブ I&D統括)、伊藤直美さん(人事総務部門 HRプロフェッショナル)のお二方にインタビューさせていただいた内容を元に、NECの取り組みについて紹介します。

聞き手はチェンジウェーブ・上席執行役員の鈴木富貴です。

インタビュイー

NEC佐藤千佳様

 

 

人事総務部門 コーポレートエグゼクティブ I&D統括
佐藤千佳 様

 

 

NEC伊藤直美様

 

 

人事総務部門 HRプロフェッショナル
伊藤直美 様

 

 

ダイバーシティは
イノベーションの源泉であると定義

2025中期経営計画(中計)の中で「イノベーションの源泉であるダイバーシティの加速」を「人とカルチャーの変革」を推進する柱の一つとして打ち出しているNEC。
ダイバーシティへの取り組みを振り返ると、2018年の中計にすでにそのエッセンスが盛り込まれていたといいます。

 

ー 佐藤さま
2018年の中計では、NECを変革するにあたっては自前主義からの脱却が必要だとして、異なる知見を持つ人材を積極的に取り入れ、スピードを持って変革を進めていこうとしました。2018年時点ではダイバーシティという言葉こそ使わなかったものの、取り組むべき施策とその意味を言語化するなら、まさにダイバーシティでした。

  1. NECが長くグローバルで戦っていくためにはイノベーションを生み出す必要がある
  2. イノベーションを生み出すためにはインクルージョンあってこそ
  3. そのためにはダイバーシティ推進である

この流れを、2021年の中計に至るまでに、もう一度整理して言語化したのだと思います。

 

企業として成長し続け、社会への貢献を目指すためには、同質性の高い組織のままでは限界があると考えたNEC。将来のビジネスを作っていくには若い人の力も必要であるし、当然ながら日本人だけでグローバルの世界で戦っていくことも無理であるし、男性だけでもできない。必要性あってのダイバーシティであり、それを生かすためのインクルージョンであるという定義が今につながっています。

 

トップのコミットメントと強力なリーダーシップ

NECでは、I&Dの実現を経営トップ自らが力強く牽引しています。2018年、新野隆氏が社長だった時代にカルチャー変革を担う組織を設立し、変革の大プロジェクトをスタート。2021年に森田隆之氏が社長に就任した後もカルチャー変革・人事変革はしっかりと引き継がれました。

 

ー 佐藤さま
「トップのコミットメントを非常に感じています。ダイバーシティの重要性をトピックとして口にするのではなく、森田自身が重要性を信じて、自分の信念としてやっていこうとする姿は大変誇らしく、とても嬉しいことです」

もちろん、強い信念があったとしても、具体的な取り組みに困難が伴うというのはどんな企業にもあることです。NECでも、まずは従業員の理解を得ることに尽力しました。

 

ー 佐藤さま
ダイバーシティの話を人事が決めてしまわない、ということは考慮していました。
現場のビジネスニーズと結びつけて、施策を打ち出したり続けて行ったり…
ダイバーシティは重要だと思いますが、ビジネスにとってはどんな成果があるでしょうか〟という質問にも、まだまだそこに立っていないという状態であれば、それを正直に答えましたし、変わり始めている箇所があれば提示しました。他にも我々の競合やグローバルの先進企業でこんな効果が出ているという外の事例をデータやファクトで示すようにもしました」
「同じ目的に向かうにもやり方を様々持つことが大事だと考え、みんなで知恵を出しあっています。スケーラビリティ(業務の増大に適応できる能力)を持ち、大きな規模で動かさなければいけないことは、大人数を対象にしたセッションを展開するとか、なるべく深く正しく理解してもらえるように、データやファクトで訴えていきます。経営トップの口から、全社員に向けてのメッセージを出すことも全体に響くと思います。また、もっと直接的なダイアログで心に響かせ、響いてもらうという側面も、両方必要ですよね」

 

直接的なダイアログの一助として
アンコンシャス・バイアスに取り組む

NECでは、2018年以降のカルチャー変革・キャリア採用の増加によって多様な人材が増え、既存の社員からは「これまでの考え方では想像がつかない、または違う理解をされることが急に増えた」という声も聞かれるようになりました。今までの延長線上、今までの常識では多様な人材をインクルージョンできない。そうした観点からアンコンシャス・バイアスの理解と浸透が必要だと考えたそうです。
研修はトップから行うことに決め、2019年にCEOと役員たちに実施。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で少し中断しましたが、2022年、研修を再開しました。

 

NEC様の取り組み
2019年 経営層にアンコンシャス・バイアス研修実施
2021年 女性選抜人材とその上長を対象に
アンコンシャス・バイアスとキャリアデザイン/育成に関する研修実施
2022年 ディレクター・シニアディレクター層にアンコンシャス・バイアス研修実施

 

ー 佐藤さま
「実施の順番については、アンコンシャス・バイアスについて理解が必要な理由が大きいところを優先させました。例えば、キャリア採用者が急激に増えてきている部門です。また、女性やキャリア採用者が既存メンバーの上司となっている部門などでは、良くも悪くも、ハレーションのようなものが出始めていたので、その度合いが強いと感じたところから始めました」

 

アンコンシャス・バイアス研修の振り返り

2022年、4つのビジネスユニットのディレクター、シニアディレクター800人を対象に100人ずつのグループに分けて合計8回、アンコンシャス・バイアスについて2時間のオンライン研修を実施しました。
この研修の参加率は91%と非常に高く、対象層の興味・関心が非常に高かったことを表す結果となりました。

 

ー 伊藤さま
「他社から転職してこられた方が皆さん、〝NECの社員は人がいい〟とおっしゃるんです。確かに良い人間が多くて、一緒に働くメンバーとどのように意思疎通を図り、相互理解すべきかに関心が高いと思います。また、日頃からそれを模索している層に研修が合致したのではないかと思っています。
また、ファシリテーターの(チェンジウェーブ)鈴木富貴さんが、心理的安全性の高い研修の雰囲気を作ってくれていたことが大きかったと思います。バイアスは誰にでもあるもの、という前提を置き、意見に正解や不正解はないという受け止めがありました。何を言ったかが評価につながるわけでもないので、発言しやすかった点がよかったです。自分の体験や考えを話す機会が多い研修でしたので、ディスカッションも活発でした」

 

ー 佐藤さま
「何か日頃の言動で違いが生まれてきたかというと、『現れてはいるけれどまだこれから』という感じがあります。ただ、新年度の組織人事を検討するディスカッションの中に“多様性のある組織か”というようなチェックの言葉が出ているのが散見されるということは、確かな成果の一つだと思います」

 

ー 伊藤さま
自分ごと化するというのが研修では大きな課題ですが、今回はそれがうまくいったと思います。全体共有の場では、ジェンダー・年齢・キャリア採用などに関わるアンコンシャス・バイアスについて、様々な声が出ました。宇宙関係、防衛関係など、女性が少ない事業場にも女性の生の声が届いたということでインパクトもあったでしょうし、もしかしたら良いショックもあったかもしれません。仕事上の相談や打診について〝私は昔、こういうことをやってほしかった〟というような声も聞かれましたので、そういう意見が直接伝わったことも、とても良い効果だと思います」

 

研修前は、“自分のビジネスユニットにはアンコンシャス・バイアスは存在しない”と言っていた参加者も、2時間の研修、参加者同士のディスカッションなどを経て、最後のアンケートでは”実は自分の周りにもバイアスが存在したと気づいた””バイアスは皆にあるからこそ、気をつける必要がある”と書き込んでくださいました。

1つのアンコンシャス・バイアスについて「知っている」「自分にもある」と気づくだけで、周囲の人への解像度は各段に上がり、行動が変わるきっかけになります。

参加者アンケートより抜粋01

参加者アンケートより抜粋2

 

アンコンシャス・バイアス、ダイバーシティへの取り組みの展望

 

ー 佐藤さま
「人材の多様化ということで言えば、女性リーダーやキャリア採用者だけでなく、今後は海外のNECグループの仲間たちと一緒に働いていく機会もいっそうに増えます。相手は自分と同じ常識を持っていると思い込んでいては組織が成り立たなくなることも予測できますよね。思い込みが怖いからこそ、やはりアンコンシャス・バイアスについては継続して学んでいきたいですね。「アンコンシャス・バイアス」という共通言語を社内で持つことができればと考えています」

「また、ダイバーシティについての知識は、特に経営層にとっては現在、知るべき、または知っていて当然の基礎と考えています。今後は新任役員に対して、リベラルアーツ的に学習機会を設けるなどの取り組みもしていきたいです」

ワークショップを機に今後やっていくこと

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