育休復職者の部下を持つ管理職対象研修の狙いと成果
ヤマハ株式会社様 事例紹介

2023.5.8

2023.5.8 ChangeWAVE

部下のキャリア構築に管理職はどう関わるのか?
~育休復職者の部下を持つ管理職対象研修の狙いと成果~
ヤマハ株式会社様 事例紹介

インタビュイー

YAMAHA様担当者様
株式会社ヤマハコーポレートサービスHR事業部人事労政部人事労務グループ企画推進担当次長
佐野 泰子様
株式会社ヤマハコーポレートサービスHR事業部人事労政部人事労務グループ主任
大原 望様
 

育休を取得した社員が復職後も「マミートラック」(※1)に乗らず、成長を続けられるか。
その社員だけでなく、チーム全体のマネジメントにはどんな注意が必要なのか。
ヤマハ株式会社では、部下の中長期的キャリア構築を上司が支援できるよう、2020年より『育休者の部下を持つ管理職向け研修』を毎年実施されています。
本レポートでは佐野泰子さん、大原望さんのお二方にインタビューさせていただいた内容をもとに、ヤマハ株式会社の取り組み事例について紹介します。
聞き手はこの研修の講師を務める、株式会社チェンジウェーブの上席執行役員、鈴木富貴です。

※1 マミートラックとは
産休・育休から復職した後、本人の意思とは無関係に職務内容が変わり、責任ある仕事や成長につながる仕事を任されなくなること。本人のエンゲージメント低下、キャリア構築への影響につながる場合もある。

 

女性活躍推進においてヤマハに存在した3つの課題

ヤマハでは、2019年に策定した女性活躍推進法に基づく行動計画で、「女性管理職比率を7.2%以上にする」という目標を立てました。当時の女性管理職比率6.0%からのスタートでした。

大原様
当時、当社では女性活躍推進において、3つの課題がありました。
まず、活躍機会という点から見ると、女性に対するアンコンシャス・バイアスや、過剰な配慮からくる特別扱い・遠慮といったものがありました。
もう一つ、管理職・ライン長たちが、時間制約のある社員のマネジメント自体に慣れていないという点もありました。多忙な職場実態の中では、短時間で帰る人よりは、長く会社にいて働いてくれる人こそ戦力だというような意識が、社内に存在していました。
それから、ダイバーシティの根底の部分において、実感値が足りていませんでした。女性活躍推進の必要性やメリットをなんとなく分かっていても、具体的に何かやっていこうという段階では自分ごととして理解されておらず、よく言われる〝総論賛成・各論反対〟というようなことが見受けられました。

チェンジウェーブ・鈴木富貴(以下、鈴木)
大原さんが捉えられた「課題」は、とても根深く、他企業の管理職にも当てはまるものではないかと思います。では、その中で〝育休復職者の上司〟に絞って研修を行った背景には何があったのでしょうか。

大原様
当社で育休からの復帰率は100%の水準です。しかし、その育休期間がどうしてもブランクというか、空白期間として捉えられがちなところに課題感を持っていました。
また、DE&Iの取り組みの一つとして女性活躍推進の新たな施策を検討する際、根底に「男女の差は出産するかしないかのみ」、「意欲、能力ある人材は性別に関わらず成長する機会を得てほしい」という思いがありました。
そこで、(前述の課題にもある)アンコンシャス・バイアスの影響を特に受けやすい育休復職者にフォーカスし、上司向け研修を開催しました。

 

アンコンシャス・バイアスによる「思い込み」に気づき
部下のリアルを知ることで対話の重要性を再認識する

チェンジウェーブに管理職研修のご相談をいただいた際、ヤマハ様では下記3点を目標に設定されていました。

  1. 多様な人材を活かすダイバーシティ&インクルージョン(D&I) の意義への理解を深める
  2. 管理職の過剰な配慮で部下の成長可能性を狭めない
  3. 部下の環境を理解し、 個々の状況に合わせた支援を継続する意識を持つ

必要以上の配慮は「思いこみ」=アンコンシャス・バイアスから生まれます。
研修設計にあたって、まずは参加者がご自身のバイアスに気づき、コントロールする手法を学んでいただくよう、アンコンシャス・バイアスを数値化・可視化できる実践型eラーニングツール 『ANGLE』 で事前学習を実施していただきました。

大原様
「チェンジウェーブ社に研修をお願いした決め手は『ANGLE』でした。自分のバイアスがどこにかかっているかを測定でき、テストの結果を可視化できると、自分ごととして捉えやすくなると考えました」。

 

 

ANGLE紹介

ANGLE受講者画面より

 

コロナ禍に始まった研修は、オンラインで実施しました。
まず講師から、『ダイバーシティ推進の意義』『アンコンシャス・バイアス対処はなぜ必要か』といったレクチャーをし、ヤマハANGLE受講者のバイアス傾向もご紹介。その後、育休取得者にフォーカスし、アンケート結果から見える〝部下のリアル〟をお伝えしました。

また、そのあとの行動につなげられるよう、グループディスカッションを多く取り入れ、管理職同士の学び合いも大切にしています。
例えば、チャレンジングな業務に対して「育児中の女性に打診するのを迷う」という事例に対し、「なぜ迷うのか」「自部門ではどうか」「そこにバイアスの影響はあるのか」など、意見交換をしてもらいます。 迷うことが問題なのではなく、そう思う理由などを共有することで、互いの持っていた思い込みや不安を解消し、他の選択肢や可能性を考えることもできます。

 

「良かれと思ってやっていた」
管理職からの率直な反応が変化に

研修後、例えば2022年度のご参加者からは、
「配慮と思ってやっていたことが部下の成長を止めるかもしれないと知った。適切な接し方、支援について理解することができた」
「自身のアンコンシャス・バイアスに気づけた」
「今後もさまざまな場面で意識し行動することの重要性を感じた」
「他の参加者と悩みを共有し、 それぞれの意見や考え、事例を聞くことができた」
…などの声をいただきました。
「ディスカッションが有意義だった」という声も多く挙げられました。

大原様
「多様な社員がいて、個々の事情も違う中で、管理職は職場を円滑に運営していかなければならない大変さを背負っています。ですから、まず、講師が寄り添ってくださったことが、受講者の安心感を呼んだと思います。日頃から自分たち管理職が頑張っていることを知っている、わかっている人が講師であるということが、心理的安全性を高めたのではないでしょうか。
また、そうした忙しい中で、管理職同士が育休復帰者のマネジメントに焦点を絞って会話をする機会はなかなかありません。
今でこそ育休取得が当たり前になり、多くの方が関心を持っているように感じますが、研修を始めた 3年前は、今とはかなり違いました。管理職同士で議論できたことの意義を強く感じます。
部下の活躍機会を創出するという観点でも、『特別視しすぎていた』という思い込みがなくなるなど、マインドチェンジに繋がっています」

鈴木
育休から復帰してきた部下や時短勤務の方だけではなく、周りを含めたチーム全体のマネジメントを考える必要がある、という気づきを挙げてくださった方が多かったのも良かった点だと思いました。当事者だけを支援すれば済む問題ではないですもんね。
皆さん、普段から課題感というか迷いを感じていて、何とかしようと思っているからこそ、研修をきっかけに行動変化につながるのではないでしょうか。

大原様
グループワークから戻ってくる皆さんが一様に笑顔だったのが印象に残っています。とても良い会話をしていたのだろうなと感じていました。

 

上司、本人、両方に研修を行って相乗効果を生む

大原様
上司のマネジメントや意識の変化に繋がってきている実感は確かにありますね。
例えば、最近も、小さい子どもがいる社員に海外出張をアサインしたという事例を聞きました。今までは、お子さんがいることへの配慮から、打診自体を躊躇する場面があったと思います。しかし、現在の業務としても、また、本人の今後のキャリアにとっても大事な出張であると考え、相談の上アサインしたと聞いています。
社の業務がグローバルに展開していることもあり、多くの可能性が提示されることで、やる気やモチベーションのアップにも繋がるのではないかと考えています。

佐野様
ヤマハでは部下の方々にも研修プログラムを実施しており、上司と部下が共通言語を持って話ができる体制を整えています。
「助けて」と言える、助けてもらえる、立場が変わったときには自分が誰かを助けてあげられる。そういった好循環を上手く生むためには、本人だけでなく、上司や同僚も含めた周りも同じ認識を持っていることが必要です。良いコミュニケーションを取るためには、思い込み=アンコンシャス・バイアスを排除し、お互いの状況を理解していることが重要だと考えています。
取り組みを進めた結果長期的な視野を持った会話もできるような環境が、少しずつ整いはじめているのではないかと感じています。

育休復職者研修実施方法

たとえば、育児中の社員にチャレンジしたい業務があっても「子どものことなど、突発的な事情で迷惑をかけるかもしれないから控えたほうがいい」と考え、本人が遠慮している、ということがあります。
こうした場合、上司は部下が遠慮していることを知らず、「やりたくないのでは」「何を望んでいるか分からない」と思ってしまうかもしれません。その社員に手を差し伸べてよいのかどうかも分からないことが多いのです。
「分からない」「知らない」といったコミュニケーションの難しさを解消するため、お互いの事情や意思を共有する努力をすることは、シンプルながらも効果的な手法であるように思われます。

 

多様な働き方を支えるために
「制度を気持ちよく使える環境づくり」
のステージへ

佐野様
両立支援、働きやすさの土台となる制度については、当社は早くから法定以上のものがあります。次はそれを知ってうまく活用してもらう、制度を気持ちよく使える環境を整えるフェーズなのかなと感じています。
制度を作って終わりではなく、〝しっかり使える形に持っていくためのもう一工夫〟のために、社員の声をうまく取り入れていければと思います。

鈴木
単に休んでもらう、ではなく、どう活躍してもらうか、ですよね。
時間制約がある人材のマネジメントを考え、実行していくことは、それぞれの事情や個性を理解してチームで成果を上げる、まさにダイバーシティ&インクルージョンの入り口です。性別問わず、働き方、キャリアへの価値観がますます多様になる中、マネジメント必須のスキルと言えるのではないでしょうか。

本日は示唆に富んだお話、ありがとうございました!

ChangeWAVE

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