〜エンカレ ロールモデルインタビュー〜
社外ロールモデルとの対話が背中を押す
自分らしいキャリアへ踏み出す力
2021年からチェンジウェーブがスタートさせた「エンパワメント・カレッジ(以下、エンカレ)」は、大企業で働く女性(非管理職)を対象とした異業種研修型プラットフォームです。これまでに、のべ63社・258人にご参加いただき、「自社にはない、新たな視点を得られた」と好評をいただいています。
(2023年秋開催のエンカレは定員を大幅に上回る申込をいただきましたため、既に締め切らせていただきました。ありがとうございました。)
プログラムのうち、特に人気なのがロールモデル・ラウンドテーブルです。
1人のロールモデルに対して参加者5、6人という少人数で設定されたラウンドテーブルで、今まさに自分が悩んでいることを直接聞くことができます。
雲の上の遠い存在ではなく、自分よりちょっと先を進む女性管理職の先輩にリアルな経験談を聞き、「パーツモデル」としていただけるようにしています。
今回は、エンカレ2023夏に登壇していただいた、株式会社ポーラの大城心さんに、参加者とのディスカッションから感じたことなどについて伺いました
株式会社POLA
TB営業部・首都中央ユニット ユニットリーダー
大城 心さん
※肩書は2023年10月当時
2004年に株式会社POLAに入社。販売企画部で店舗営業支援、その後ビジネスパートナーやオーナー教育、営業リーダー育成を担当。 2年間の産休・育休を経て2018年から人事戦略部にて採用・要員管理、 組織風土改革・人事制度運用、働き方改革・ダイバーシティ&インクルージョンに取り組む。2023年1月より、トータルビューティ事業部・営業リーダーに。現在9人のスタッフと共に134の売り場を担当している。
自分の試行錯誤が誰かのためになる
―ロールモデルとしてエンカレに参加された経緯を教えてください。
ポーラは女性の管理職も多く、仲間も相談できる場所も多くあります。実際、私自身も、異動の際などは色々な方に話を聞いてもらって気持ちを整理しましたし、社長(及川美紀氏)からも「自分らしく、好きなように、のびのびと」と言われ、自分らしく働くことができつつあります。ただ、他社では女性管理職の数がまだまだ少ないとも伺いますし、私の経験がお役に立つのなら、ぜひお力になりたいと思い、参加させていただくことにしました。
―エンカレのラウンドテーブルの印象を教えてください。
遠い存在だと感じてほしくなかったので、「私もすごく悩んだけれど、やってよかったと現時点では思っています」というように、今の思いを率直にお話しさせていただきました。
参加者の皆さんは皆、会社も経験も違いますが、和気あいあいとした感じで、皆さん肩肘を張らずにお話しされていたのが非常に印象的でした。エンカレのような異業種の研修は「多様性を知る」ということに通じますね。
皆さんからは、「なぜ管理職になろうと思ったのですか」とか、「小学生の娘がいるのですが、仕事との両立はどうされていますか」、「個人の仕事とチームのマネジメントはどう工夫されていますか」というような質問をいただきました。
―それぞれの質問に、どのように答えられたのですか?
例えば、仕事との両立については、経験をありのままお話ししました。我が家では、育休中はどちらかというと私がメインで家事をやっていたのですが、そのままフルタイムで復職をしたら時間のやりくりに限界がきてしまいました。このままではいけないと家族会議をし、その時初めて、自分の仕事の状況や、今後どうしていきたいと思っているのか、などを夫に話したのです。
夫は「そこまで本気で仕事をやりたいと思っていたんだね」「だったら、家族の時間も大切にしながら、仕事がしやすい体制を整えよう」と協力体制を築いてくれました。家事も育児も曜日で分担して、先々のスケジュールが互いに組みやすいようにして……。話すことで、具体的にどうするかが生まれるということ、そして具体的な工夫についても受講者の皆さんにお伝えしました。
それから、「仕事も、段取りをするときはメンバーとの細かい確認や相談が大切だと思うのですが、家族との相談も同じくらい重要ですよね」とお話しました。また、「無理をしない方がいい」とも伝えました。
(写真は大城さん提供)
一人で頑張りすぎる女性だからこそ、頼り上手になろう
―エンカレご参加者の印象はどうでしたか?
ラウンドテーブルで印象に残っているのは、一人で頑張っている女性が多いこと。それは昔の自分を思い出させるものでした。真面目で、責任感が多くて、頑張りすぎて頼れない。既に、皆さん本当に頑張り抜いているのがわかりました。このまま管理職になると、限界までさらに背負ってしまうのではないかとも感じました。
ですから、「周りを頼ることが大切。少しずつやっていってください」とお伝えしました。タスクを分解してこなしていくことなどももちろん大切ですが、「マネージャー=全能な人間」ではありません。自分が不得手なことを認識してそれを表に出して、「私はこれが不得手なのです。だから助けてね」と、最初から、どんどん伝えていくことが大事だとお伝えしました。
―「管理職になる」ということに対するイメージとして「仕事が増えて責任が重くなる」というものがありますよね。そこにネガティブな印象を持たれている方が多いかもしれません。
人が増えて、やれる仕事の範囲や規模感が大きくなっていくのは事実です。一人ではどうにも対応できないことも出てきますよね。ただ、そういう時に、全てを背負って一人で頑張るのではなく、自分のチームや部下を能動的に頼っていくことで、人材も育っていきます。部下をちゃんと信頼して頼ることによって、自分も楽になったり、チーム全体の可能性も広がったりするのです。
だから、ちゃんとチームや部下には頼ったほうがいいし、マネージャーが頑張りすぎないほうがいい。頼ることで、「やってもらってありがとう」という場面が増えて、たくさん周りに感謝できて、本当に良い環境の中で仕事ができるようになると思います。私は、感謝しながらチームで仕事ができることを本当に幸せだと感じられるようになりました。
少人数で対話できるからこそ互いの本音で話せる
―管理職としての具体的な経験談を、少人数で囲んで聞けるのは貴重ですね。
そうですね。私の体験を話すだけではなく、参加者同士で悩みをシェアする場にもなったので、「私だけが悩んでいるわけではない」と気づけた気がします。同じように悩みながらも頑張る人たちがたくさんいることを知り、励まされるのもこういう場の魅力だと思いました。
私自身、皆さんの声を聞いていて「ああ、私もそうだったな」と思って、頑張った自分にエールをいただいたような気持ちになりました。
―女性だけに限りませんが、やりがいをもって楽しく働くためのコツは何でしょうか?
「仕事へのやりがい」とか「楽しく働く」とか、夢みたいな言葉に聞こえるかもしれませんが、人生の中でもかなり時間を割いているのですから、それを求めていってもいいんじゃないかと思うのです。誰に何を言われたとしても、自分がどう感じるか、自分が心地よい道を探して行けたらいいのではないでしょうか。
そのためにも、ざっくばらんに自分の考えを話せる場があることは貴重だと思います。会社の中にいると、さまざまな利害関係があって何でも話せるわけではありませんよね。純粋な疑問や、思い、悩みを吐露できる場は非常に貴重です。
また、自分だけで考えていると、どうしても自分のこれまでの経験や知識の中からしか答えを探すことができません。だからこそ、自分とは違う考えがあって、違う選択があるということに気づくということは本当に大きなことだと思うのです。
今回のラウンドテーブルでも、最初は、参加者の皆さんそれぞれに、自分の経験や価値観、会社の文化の中にある「こうしなくちゃいけない」に囚われていたところがあったかもしれません。でも、次第にそこから抜けて「自分がどうしたいか」という意識に変わっていたように思います。
―エンカレにご参加の皆さんや、これから「自分らしい」働き方を目指して踏み出していく方々に、メッセージをお願いします。
ロールモデルというのは、自分がまだ知らない可能性や道をすでに歩んでいる人のこと。それは、必ずしも1人の理想的な人を見つけて「この人みたいになる」とその背中を追うことではないと思います。
エンカレの中でも伝えられていましたが、パーツモデルをたくさん持つことが大切だなと思います。私も日頃から「この人のこういうところがいいな」という「パーツ」を集めて、自分の人生に取り入れるようにしています。
私もまだ自分らしい働き方を模索する道の途中ですが、今回、エンカレに参加し、受講者の皆さんのひたむきさや変化を感じて元気をいただきました。ロールモデルとして参加する人にとっても、自分の働き方への自信が持てたり、頑張ってきた自分を肯定できたりする大切な時間になるのではないでしょうか。
大城さん、ありがとうございました!