「アタリマエをぶち壊す」変革の仕掛け
ハウス食品グループ様事例紹介
変革の必要性は理解されているものの、具体的なアクションとなるとなかなか難しいというのが多くの企業が抱える課題かもしれません。
最初の一歩をどう動かし、それを担う自律型人材をどのように増やすのか。
クオリティ企業への変革を続けるハウス食品グループ様では、2021年度、その動きによりドライブをかけるため「アタリマエをぶち壊すワークショップ」をスタートさせました。
「変革屋」であるチェンジウェーブは、このワークショップの企画設計、伴走に携わらせていただいています。
本レポートでは、実施の背景や課題感、その成果などについて、ワークショップオーナーである大澤善行常務、事務局の山脇直人氏にお話を伺います。
「アタリマエをぶち壊す」ワークショップの実施にあたって
今、企業は変革を求めている。このフレーズは異口同音に叫ばれています。弊社も「クオリティ企業への変革」を中期経営計画に掲げ、取り組みを進めています。具体的な変革テーマは経営においても設定し、進めておりますが、一部の部門、限られた人の取組みではなく、全員参加の変革をいかに社員一人ひとりがしっかり理解して進められているのか、こんなことを悩んでおりました。
その時に飛び込んできたフレーズが「アタリマエをぶっ壊す」でした。”これだ!!“と思いました。これがチェンジウェーブさんとの出会いです。日常的に繰り返される組織の習慣、これをゼロベースで見直していく。学習という枠組みで取り組みハードルを下げ、実証実験で実践し、成果を検証する。これを変革の仕掛けとして取り組む。
我々の取り組みは「あなたの今、一番、ぶっ壊したいアタリマエって何ですか?」この問いかけからのスタートです。
「アタリマエをぶち壊す」ワークショップ 概要
ねらい
- 変革したいという想いある社員の、最初の一歩を後押しし、成功体験を得ることで個人の成長と、変革意識向上を目指す。
- グループ各社及び各部門の多様な個性を融合し、課題探索や業務変革にむけて「対話できる組織」を目指す。
実施方法
- ハウス食品グループ各社から参加者を公募。課長職以下、性別・年齢は問わない。
- 営業、業務、研究、生産など、各社・各部門混合でチームを編成する。
- グループの「アタリマエ」(=慣習、思い込み、固定観念)を壊し、働きがい変革と事業価値向上につながる実証実験に取り組む。
- 実験結果と考察、ネクストステップについて、浦上社長、大澤常務に提言する。
モチベーションでも、実行面でも、
変革をドライブする「キッカケ」が必要だった
チェンジウェーブ 鈴木富貴(以下、鈴木):
「アタリマエをぶち壊す」ワークショップの初年度を終えて、ご参加くださった皆様、周囲の方々の反応などはいかがでしょうか?事務局としてのご感想もぜひお聞かせください。
山脇直人氏(以下、山脇):
参加者、つまり現場の社員が「意外と会社は動かせる」「自分が動けば、ハウスという会社はきちんと聞いてくれるのだ」と感じられたのは、大きな成果だったと思います。
「まずは『やってみる』ことが一番の検証であり変革への近道」という、リーンスタートの本来の意味を体感できたのではないでしょうか。
参加者から「それはアタリマエ(思い込み)みたいだな」という会話が自然に出てくるようになったのを聞いて、アタリマエを疑うことがアタリマエになってきたように感じます。
鈴木:
大きな変化ですね。今回のワークショップでは、大澤常務が複数回にわたってフィードバックしてくださったほか、最終発表には浦上社長もご参加くださり、貴社の本気度が伝わってきました。
山脇:
参加者が実施した6つの実証実験は、製品開発フローから会議参加の仕組み、工場勤務者の働きがい変革など様々でしたが、そのうち5つは現在、継続検討中で、関係部署に引き継いだり、共に議論を進めたりしています。常務の大澤が本気でこのワークショップを推奨していたことは大きかったかもしれません。全社的な取り組みにもできましたし、参加者にもその気持ちは直に伝わったのではないかと感じました。
鈴木:
参加された皆さんの熱量の高さはとても印象に残っています。
実証実験・アイデア出しのフェーズでは、ご自身の課題感からスタートし、「アタリマエ」を壊す問いを設定していただきました。1人、また自部署だけでは難しい課題設定も、こうした場を設けて半ば強制的に行うことで見えてくることがありますし、内発的動機に基づくからこそ、やり抜く力が上がるという面もあります。盛り上がって幾つもアイデアが出たチーム、唸りながら絞り出したチーム、それぞれ真摯に取り組んでおられました。
山脇:
これは旧態依然の壊すべき「アタリマエ」か、より良くする程度の課題か、したいこと、すべきこと、できることの葛藤の中で、参加者は常に「これが壊したいアタリマエなのか」と自分に問いかけながら検討していました。
「できること」から脱却し
「やりたいこと」に向き合う
山脇:
もともと弊社の人材部門では、重点テーマとして「働きがい変革」及び「多彩な個性の発揮と融合」を掲げています。
「働きがい変革」は「働きやすさ」と仕事の「やりがい」の両方を追求しようというコンセプトですから、このワークショップについても、上から指示するのではなく、現場発の動きとするところに期待していました。
また、新規事業担当のような1部署に任せるのではなく、部署横断での全社的なものにしたいという想いもありました。
例えば業務変革で言うと、これは弊社の良いところでもあるのですが、各部署の業務範囲がきちんと整理されているので、部署を越える動きを起こす場合には正式な依頼が必要になります。少しの変更でも大事になってしまう、という印象があるので、変えようとしない。「変えられないことがアタリマエ」になっていました。そこを問い直したい、と。
鈴木:
確かに、「変える」ことに真正面からぶつかるのは難しく、リスクもありますよね。
チェンジウェーブではこうしたワークショップを複数の企業で実施させていただいていますが、「研修」「ワークショップ」のような立て付けとし、ハードルを下げて取り組んでいただくように設計しているのは、そうした理由からです。
ただ、いわゆるインプット型の研修より、参加者の主体性・本気度を上げる必要がありますので、戸惑われた方はいらしたかもしれません。
山脇:
そうですね、参加者には、インプット型研修でなく「主体的かつ実践型である」と伝えるように配慮はしていました。
正直、大変な場面はありましたが、結果的には、現場にいる社員が自らの問題意識を
もとにアクションを起こすことで「内発的な変革」につながりました。現場発だからこそ、各取組みが周囲を巻き込むことができたと感じています。
鈴木:
製品開発に取り組んだ方が、上司から「こんなこと、自分でも思いつかなかった。楽しみだね」と言われたと伺いました。
山脇:
実験実施のために関係部署と交渉する過程でも、共感や支援が広がったようです。
終了後の調査では、84%の参加者に組織風土に対する意識向上が見られました。
他社・他部門のメンバーとの取り組みで、多様性の価値が目に見えて実感できた
鈴木:
このワークショップのポイントは「小さく、とにかく実際にやってみる」と「多様な人材で取り組む」にあると思うのですが、多様性からチームダイナミクスが生まれる実感はありましたか?
山脇:
大いにありました。今回の参加者はそれぞれに課題感を持っていましたので、当初は3~4名のチームで実証実験を企画・実施すると「自分のやりたいことができないのでは」と懸念を持つ人もいました。
ですが、結果的には「チームで一緒に検討できたことが良かった」「価値観の多様性を感じられた」と多くの参加者が述べており、参加者アンケートでも90%がポジティブな感想を持っています。特に会社や部門を混ぜて編成したチームで「価値を感じた」という声が高く、面白い実験も生まれました。「多彩な個性の発揮と融合」の文脈でも、対話の価値を感じられる機会となったのではないかと自負しています。
ワークショップ終了後の参加者アンケートより
山脇:
今回、変革の意志を持った参加者がグループ内から集まったことで良いネットワークができ、新しい動きも生まれています。彼ら1期生の成果を見て社内の反応もより大きくなると思いますので、2022年度も、この「アタリマエ」ワークショップをグループ内でさらに広げていきます。価値ある実証実験に向けたフォローと継続検討の仕組みづくり、チャレンジャーの称賛含めたPRにも尽力していきたいと考えているところです。
鈴木:
「アタリマエをぶち壊すワークショップ」の動きがさらなる大きなうねりにつながるよう、弊社もお手伝いして参りたいと思います。本日は誠にありがとうございました。
メールマガジンのご紹介 ChangeWAVEの活動報告、インサイト記事、お知らせなど、組織変革に関わる最新情報を月1回程度お届けするメール配信サービスです。 配信をご希望の方は以下のフォームからお申し込みください。 https://changewave.co.jp/magazine/