キャリア採用(中途採用)者の活躍を阻むバイアスへの対策
事業モデル変革にあわせ、キャリア採用(中途採用)を実施する企業が増加しています。
「自分の成長のため、機会があれば転職する」という職業観が若手を中心に広まってきたこともあり、職場で人材の流動化を実感している方もいらっしゃるのではないでしょうか。
一方で、同質性が高く自社の「当たり前」が色濃く残る職場では、良い人材を確保しても定着が難しい、期待ほどのパフォーマンスを出してもらえていない、といった悩みも聞かれます。
キャリア採用者の活躍と職場の変革に向けて、企業としてできることは何か。
まずは、採用側と現場の双方にある、アンコンシャス・バイアスについて考えます。
2022年、中途採用は大幅に増加
~必要な人数を確保できない企業も~
リクルートワークス研究所の調査によれば、企業の中途採用実施率は継続的に増加しており、2022年度下半期においては75%超の企業が中途採用を行っています。
一方で「必要な人数を確保できなかった」と回答した企業は52.7%もあり、人材確保の難しさも同時に増してきたと言えます。
中途採用者の組織適応課題は何か
人手不足が確実に進む中、企業にとっては優秀な人材を確保すると同時に「人材を失わない」、「継続して力を発揮してもらう」ための土台づくりも進めなくてはなりません。
しかし、企業の現場では、「中途採用者が力を発揮するまでに意外と時間がかかる」「定着しない」「うまくコミュニケーションが取れていない」といった悩みも聞かれます。
具体的にはどんな声があるのか、チェンジウェーブグループが伴走させていただいている、複数の企業で伺ってみました。
現場から聞こえてくる声には、古くから社内に醸成された風土、やり方、「こうするのが当然」という思い込みがあるように見えます。
中途採用者にこんなことを言ってもいいのか、既にわかっているだろう、といった遠慮もあるかもしれませんが、その会社の「当たり前」であるがゆえに言語化されていない〈暗黙の了解〉などは、特に分かりにくいもの。キャリア採用者の側にも意識すべき点はありますが「即戦力」というラベルゆえに、「聞けない」「頼れない」という状況が生じることもあります。
「思い込みかもしれない」「わからないかもしれない」という前提をお互いが持てるかどうかによって、コミュニケーションの取り方は変わりそうです。
中途採用者へのオンボーディング施策
仕事のスキルや知識の習得、ルールの理解といったものとは別に、中途採用者の固有課題として挙げられるのが「アンラーニング(学びほぐし)」「中途意識の排除」です。
新しい環境では通用しなくなった知識を進化させ、適応していくこと、また、既存社員とのコミュニケーション構築は最も重要なポイントと言えます。
そして、コミュニケーション構築がうまくいかないと思うとき、一例ではありますが「無意識の思い込み」が関わっていないか、振り返ってみることをお薦めします。
特に管理職など、職場のインクルージョンに影響を及ぼす方々には、必須かもしれません。
アンコンシャス・バイアスが生じさせる遠慮と躊躇
チェンジウェーブグループが提供するアンコンシャス・バイアスのラーニングプログラム「ANGLE」では、IATという心理学研究で使われるテストにより受講者のバイアスレベルを測定できます。他社との比較や部門・部署別の傾向を見ることで組織課題を明確にし、行動の変化につなげるや手伝いをしています。
「自分にもバイアスがある」「こんな言動に影響が出ているのか」という「気づき」が、変化を作るための第一歩だからです。
ANGLE受講者のセルフチェックでは、シニア層への年齢バイアスが強く見られます。
「年上の部下は扱いにくい」「シニア層には意見しづらい」というような言動に影響しています。
キャリア採用で入社すると、プロパー社員より年齢が若くても職位が上であったり、専門職としてプロジェクトを率いる立場に置かれたりすることがあります。特に年上の部下を持つと、年齢バイアスの影響で思うように部下へのフィードバックができなかったり、遠慮して業務のやり方を変えられなかったりすることがあります。
一方、自分よりも力のある立場の人が無自覚に発する「うちのやり方はこうだから」といった発言や、「新参者の意見は聞かない」という姿勢が、業務、職場の変化を妨げることにもつながります。
評価、業務付与にアンコンシャス・バイアスが影響していないか
脳は自分に似たものを好みます。また、自分が所属する集団が他よりも優れているとも認識しがちです。同質性からの脱却を目指す多くの日本企業にとっては、学歴へのバイアスや、学閥の存在も根深い課題ですが、キャリア採用者に対する課題に限ると、評価や業務付与に影響が出ることが多くあります。
つい、これまでと同じやり方を進めてしまう、自社の仕事の進め方、評価されてきたリーダー像をキャリア採用者にも当てはめてしまう。自分と似たタイプ、仕事の仕方をする人を高く評価してしまう。
もしこんなことが周囲で起きていたら、そこにはアンコンシャス・バイアスの影響がありそうですし、変化の兆しが潰されているかもしれません。
「バイアスがあるかもしれない」という気づきが組織の変化対応力を高める
今回、人事部門の方々にヒアリングさせていただく中で、こんな声を聞きました。
「『辞めます』って言われてその理由を聞くと、『もっと早くに聞いていればなんとかなったのではないか』と思うことが結構あるのです」
「本人からは難しいのかもしれませんが、ダメだと思わず、周囲からのちょっとした働きかけがあれば変われたのでは、まだやれることがあったのに、と残念に思うことがありました」
その「ちょっとしたこと」は、アンコンシャス・バイアスへの「気づき」と「小さな行動」から始めることができるのでは、と思います。
一人ひとりのバイアスが組織にどのような影響を与えているのか、どのようにすればバイアスへの気づきと変革が起きるのか、その対策も含めて、職場の変化をご支援していきたいと考えています。
※チェンジウェーブグループでは、2024年5月、アンコンシャス・バイアスの継続学習と組織診断を通してダイバーシティ推進と組織風土改革をご支援するeラーニングプログラム「ANGLE Plus」をローンチいたします。
企画概要書、デモ版のご説明等をご用意しておりますので、ご興味持っていただけましたら下記までお問い合わせください。
【ANGLE Plusご案内記事】
https://angle.changewave.co.jp/article/announce_angleplus202401