Why Diversity2
– 変革リーダーは、何処から生まれるか –
2016年10月5日(水)開催
〈REPORT〉
10月5日、ChangeWAVE企画の講演&パネルディスカッションイベント「Why Diversity2~変革リーダーは、何処から生まれるか」が開催された。
ダイバーシティ推進は近年、女性を中心とするマイノリティが抱えるハンディキャップを埋めるような「Diversit1.0」の施策から、属性にとらわれずに個々人が輝き、イノベーションにつながる「Diversity2.0」に進むフェーズにうつりつつある。本イベントでは、この「Diversity2.0」にあたる、イノベーションを起こせるような変革リーダーをどのように生み出すことができるのかという問いに対し、アカデミックな知見と企業の実例から考えていくことを目指す。
前野隆司・慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授からの基調講演「ダイバーシティ&インクルージョンのある組織はなぜイノベーティブで幸せなのか」では、ダイバーシティ環境が、個々人の幸せに大きく影響を与えること、そして幸せな人ほどイノベーションを起こしやすいことが示されている研究結果を紹介。
前野教授によれば、人が幸福を感じるのには、自己実現と成長ができること、自分のためというよりは社会のため人のためという意識があり多様な友人を持っていること、前向きな考え方があること、自分らしさを発揮できることなどの心理的な因子が重要だという。幸せでリラックスしているとクリエーティビリティが上がったり、ポジティブな感情でいるほうが他の社員を助け、組織を守り、生産的な提案をし、組織内で自分の能力を向上させる傾向があるという研究結果もある。福利厚生などによる「従業員満足度」よりも、「従業員幸福度」を高められることが企業にとって重要だと前野教授は説く。
次に、先進企業の人事・ダイバーシティ推進室の3名が登壇。ソフトバンクの源田泰之・人事本部採用・人材開発統括部長は「ソフトバンクには、様々な抜擢のされ方があり、登り方が1つではない。本人が選ぶということも大事にしており、研修も大半が手上げ。自分自身でこの部署で活躍したいと言って異動するFA制度という仕組みもある」と紹介した。
リクルートホールディングスの伊藤綾・ソーシャルエンタープライズ推進室長からも「近年、組織の中にありながら自主性が急速に問われている」との見解。リクルートでは、「Recruit Ventures」という、毎日エントリーが可能で毎月一次審査が行われる新規事業提案制度があるほか、全員が「WILL(やりたいこと)CAN(できること)MUST(やるべきこと)を記入するシートを持ち、半年に一度面談する体制がある。
伊藤室長が「WILLは本当に多様で、一人として同じことはない。皆が最初から持っているわけでもないが、その多様なWILLの発芽を見逃さず、生かせるかがマネジメントの妙」と発言すると、ほかのパネリストやフロアから「WILLとは言っても業務との関係で考えがちなところを、リクルートは業務と離してWILLを語れるところがすごい」と感想が漏れた。
日立ソリューションズでは、ダイバーシティ推進の組織を近々解散させる方向であることが明らかに。小嶋美代子・ダイバーシティ推進センタ長は「ダイバーシティ&インクルージョンが他社に比べてすごく進んでいるというわけではないものの、戦略的にはある程度の変化と波が必要。立ち上げたものを誰かが収束させて、次の波をもってくることが重要では」と語った。特に多様な人との接点をつくるため、「ある時には強制力を持って社員を社外の活動に送り出していきたい」という。
パネルディスカッション2では、実際にこうした企業の制度や風土によって背中を押された「変革リーダー」の実例として、ソフトバンクVR事業推進室の加藤欽一さん、リクルートで一時保育予約のCoPaNaのプロダクトオーナー鳥巣彩乃さんに話を聞いた。ともに、自身や身近な人の経験からサービスの必要性に強く問題意識を感じた経緯や、新規事業提案などの制度だけではなく、期待し、後押しをしてくれた上司の存在、会社の環境などを語った。
最後に、チェンジウェーブ佐々木裕子社長から「保育事業を運営する中で子どもを見ていると、何もしないで放っておいた状態で本当に多様。大人は様々な固定観念や枠をはめて考えてしまうが、それをいかに解き放っていけるかがカギなのでは」とのまとめで終了した。
(文責:チェンジウェーブ 中野円佳)
会場:Open Innovation Biotope “Sea”(協力:株式会社岡村製作所)