女性登用のハードルを越える①
企業のD,E&I実現へのステップ

2023.9.26

2023.9.26 ChangeWAVE

女性登用のハードルを越える①

企業のD,E&I実現へのステップ

「働き方改革」「エンゲージメント向上」「人的資本経営」……。人と組織の課題が重要度を増す中、ダイバーシティ推進部や人事部等、懸命に改革に取り組まれている方々から吐露されるのは、次から次へと課題が出てくるという現実です。

企業はそれぞれ個性豊かであり、長い歴史の中で育んだ文化とその組織の力学があります。だからこそ、変革を進めるためには、戦略だけ、研修だけの提供では足りません。課題をとらえた戦略的なデザインをし、目指す成果と時間軸から逆算した全体図と施策を設計、いくつかのアプローチを組み合わせて「見える成果を出しながら」進めることが必要です。

では、何から始めるのか。取り組みに成果が出にくい企業の特徴とは何か。
「女性登用のハードルを越える」をテーマに、3回にわたって考えてみたいと思います。
まず今回は、日本におけるダイバーシティ推進の現状、取り組む企業の苦悩と見えてきた課題、解決へのステップなどについてお伝えします。

■女性登用のハードルを越える 記事一覧
① 企業のD,E&I実現へのステップ ※本記事はこちら
② 実現へのロードマップ 3つの相違を改善するパイプライン構築に必要なマインドセットとジョブアサインメント

ダイバーシティがぶつかる課題「現場の効率」と
マネジメント

経営層がD,E&Iの推進に力を入れる背景には、株主からの強い要望があります。経済産業省の調査によると、ジェンダーの多様性、文化面の多様性を持つ企業は業種平均よりも優れた業績を達成する傾向が見られるという結果が出ているため、株主は同質性の高い組織の意思決定を排除する傾向にあります。経営層としてその期待・意思に沿うことは必須です。

参考:ダイバーシティに関する各種調査(経済産業省経済産業政策局経済社会政策室)
https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/sansei/diversity/pdf/004_05_03.pdf

しかし、実際にダイバーシティを推進する企業内では、個を尊重しながら意思決定を繰り返す……いわば「予定調和ではない」現場を回していくのは、ある種の「面倒臭さ」を伴い、「難易度が高いマネジメント」が付いてくることになります。

「これまでの『常識』が通じない」
「どこまで理解していてどこまで同意できているのか、確認しないと抜けが出る」
「議論がまとまらず、会議が長くなる」

これまで通りの業務であっても同様ではないということが、現場の声を聞いているとよくわかります。

既に「多様な人材で溢れている」職場の現状を
認識できているか

実際、すでに多くのマネージャーが育児や介護と仕事を両立している部下やメンタルヘルスに課題を抱える部下など、部下の多様性に直面し、これまでの慣習に則ったジョブアサインメントでは現場を回すことができなくなってきています。

女性管理職の「数」を増やすということを目的にD,E&Iを進めてきた企業の多くは、ここで大きな壁にぶつかります。女性だけでなく、社内に溢れる多様性にどう対応するのか。ダイバーシティ時代のジョブアサインメントに管理職が今、悩み始めています。しかしこうしたマネジメントは社内で上司を見て学ぶ、または、相談しながら進めることが難しい上に、そのスキル自体、これから開発していかなくてはならないという状況かもしれません。
具体的なスキルとしては、相互のアンコンシャス・バイアスの理解やインクルーシブ・リーダーシップ等が挙げられますが、この土台となる組織の作り方、目標の掲げ方も従来とは変わってきています。

既に職場にいる人材は多様なのだ、と認識し、仕事を割り当てや動機づけ、相談などに対応する…
マネジメントの負荷が高くなっていることは明らかで、男女問わず若手の昇進意欲減退に大きく影響が見られます。管理職の業務、権限、働き方にまで手を入れられるか、ここも1つ大きな段階になります。

本質課題と自社の文脈をとらえD,E&Iを実現する

日本には歴史のある企業が多くありますが、その中には、これまでいわゆる「男性の職場」とされてきた職種も少なくありません。そもそも女性の数が少ないということもあり、「女性管理職育成の難しさを顕著に感じている」という声を頻繁に聞きます。

こうした企業では、同質的な教育や方法で女性管理職の増加を実現していくのは難しく、構造的なギャップを解消していく必要があります。自社の育成・ジョブローテーションにはどんな課題があるのか、社員の能力開発・機会提供に不足はないか。「自社ならでは」のダイバーシティを実現するために、まずは本質課題と文脈をとらえ、女性の育成・登用から始めるのは至極当然であると皆さま認識されているのではないかと思います。

時代の流れとして、企業のD,E&Iは必須の課題であることは間違いありません。
ただ、現在、渦中にいるダイバーシティ推進部、人事部の皆さんなど、ご担当者・ご担当役員はまだまだ非常に苦労されているとお見受けします。
実際には5年、10年単位で考えていかない限りD,E&Iの実現は叶いませんし、その過程で幾つか越えるべき壁があります。しかし、女性の育成・登用のような古くて新しい課題を解くには、今だからこそできる方法で、確実に、丁寧に、体形的に、進めていくのが肝要であり、チェンジウェーブがお手伝いできる分野であると考えています。

それにはまず、適切な道と手段を選び、社内コミュニケーションを意識しながら進んでいく必要があります。

次回以降の記事では、女性活躍やD,E&Iの取り組みに成果が出にくい3つの理由を掘り下げ、解決策についてもお伝えしていきます。

 

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